【書評】働きたくないイタチと言葉がわかるロボット 人工知能から考える「人と言葉」 川添 愛/著
人工知能に関する読書の第二弾です。
タイトルが実に意味深で、好奇心旺盛な私は、このタイトルにつられての読了でした。(笑)
著者は「理論言語学」と「自然言語処理」を専門に研究されている学者さんです。
コンピューターの専門家ではなく、言語の専門家が、人工知能での言語処理の難しさを世に問いたくて、出版された本でした。
さて、私の話に代わりますが、日常生活で、面と向かっての会話が多いと、その場の状況や表情、ジェスチャー、イントネーションによって、感情的な部分や雰囲気を伝えられることで、人間は楽をするのか、反射的に、言語である言葉や文章の正確さが欠けるんだよなあとは日常的に感じていた。
特に感じるのは、「ここ」とか「こっち」とか「これ」といった視覚認知を前提とした客観的な修飾を省略した、いわゆる話言葉などの日常会話に甘んじていると、文章での表現力が著しく低下してくるのでは?とすら思うのである。(ちなみにそういう傾向の人が私の近くにはいるのだ。)
そういう意識を持ちつつ、さらにブログという文章で表現することを行う身としては、言葉の重要性と共に、文章を作成する難しさを日常的に感じてもいる。
常々、自分のブログを読み返すたびに、「文章が長い」、「表現が硬い」、「意味不明な表現がある」などなどを感じているのであるが、なかなかこの状態を直せない。
一方で、このような本を好んで読むというような読解力は、そこそこあるというのは矛盾しているのではないかとも思うのであるのだが、現在のAI、つまり人工知能では、とても人間の日常会話はできないということが、本著では寓話のような筋立てで、実にイメージしやすくなって、著述されている。
本著を読むと、人間の会話力の凄さが理論的に明らかであるし、それゆえに、今のコンピュータでは、人間と対等な会話のできるコンピュータは絶対にできないことがわかった。
読んで良かった、知識が格段に増えたなあと思える本でした。
惜しむらくは、本著は少し長く冗長的に感じる点があるのだが、これは著者が理論言語学を専攻しているが故なのであろう。論理重視したが故に長くなったのだろう。レベルは違うが私と同じパターンだ。(笑)
追記:
この本には様々な動物が言葉のわかる機械を作っているのだが、イタチを主役にした理由は、言葉のわかる機械づくりは、まさに「イタチごっこ」の世界だからということらしい。
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