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2017年7月12日 (水)

【映画】セールスマン(イラン・フランス)

イスラム社会といえども現代化は免れず、でもそこに根付いている文化はやはりイスラムなのであっても、良い映画はできる、なぜかイランでは

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「別離」に続き、本作で2度目のアカデミー外国語映画賞を受賞、第69回カンヌ国際映画祭でも脚本賞と主演男優賞を受賞したアスガー・ファルハディ監督作。小さな劇団で俳優として活動する夫婦。ある日、妻が自宅で何者かに襲われ、夫は独自に犯人捜しを始める。出演は「別離」のシャハブ・ホセイニ、「彼女が消えた浜辺」のタラネ・アリドゥスティ。

【ストーリー】
教師のエマッド(シャハブ・ホセイニ)は妻ラナ(タラネ・アリドゥスティ)とともに小さな劇団に所属し、上演を間近に控えたアーサー・ミラー原作の舞台『セールスマンの死』の稽古に忙しい。そんななか、思いがけないことで住む家を失った夫婦は劇団仲間が紹介してくれたアパートに移り住むことに。慌ただしく引っ越し作業を終え、『セールスマンの死』の初日を迎えた夜。ひと足早く劇場から帰宅したラナが侵入者に襲われ、この事件以降、夫婦の生活は一変する。包帯を巻いた痛々しい姿で帰宅したラナは精神的にもダメージを負い、めっきり口数が少なくなった。一方、エマッドは犯人を捕まえるために「警察に行こう」とラナを説得するが、表沙汰にしたくない彼女は頑なに拒み続ける。立ち直れないラナと、やり場のない苛立ちを募らせるエマッドの感情はすれ違い、夫婦仲は険悪になっていく。やがて犯人は前の住人だった女性と関係がある人物だと確証を掴んだエマッドは、自力で犯人を捜し出すことを決意するのだが……。

【作品データ】
原題 FORUSHANDE
製作年 2016年
製作国 イラン=フランス
配給 スターサンズ=ドマ
上映時間 124分
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【スタッフ】
監督 アスガー・ファルハディ 
脚本 アスガー・ファルハディ 
脚本監修 パリサ・ゴルゲン 
撮影監督 ホセイン・ジャファリアン 
カメラマン ペイマン・シャドマンファル 
美術監督 ケイワン・モガダム 
音楽 サッタル・オラキ 
録音 ヤドラー・ナジャフィ 、 ホセイン・バシャシュ 
音響効果 モハマッドレザ・デルパーク 
編集 ハイデ・サフィヤリ 
衣裳 サラ・サミイ 
メイク メールダッド・ミルキアニ 
ラインプロデューサー ハッサン・モスタファウィ 
助監督 カーウェ・サジャディホセイニ 
スチールカメラマン ハビブ・マジディ 

【キャスト】
Emad シャハブ・ホセイニ 
Rana タラネ・アリシュスティ 
ババク ババク・カリミ 
男 ファリド・サッジャディホセイニ 
サナム ミナ・サダティ 
キャティ マラル・バニアダム 
シヤワシュ メーディ・クシュキ 
アリ エマッド・エマミ 
エスマット シリン・アガカシ 
マジッド モジュタバ・ピルザデー 
モジュガン サーラ・アサアドラヒ 
シャフナザリ夫人 エテラム・ブルマンド 
サドラ サム・ワリプール 

【感想】
良い映画を観たいと思っているが、調べたりするのが億劫なので、映画賞受賞となると俄然興味がわくというのが、私の特性である。
世界にはいろいろな映画賞があって、一番有名なのはアカデミー賞であるが、その中でも外国語映画賞はいつも気にしている。

さて、同監督の「別離」は、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したという認識はなくて、観たのだが、実に良い映画でした。

本作品においても、「別離」で醸し出されていた、イスラム社会の閉塞性とそれがゆえの社会の不条理さが描かれていて、すっきりしないエンディングと共に、私にとってはとても印象深い映画であった。

イスラム社会について、深くは知らないが、自分なりに考察したイスラム社会像に照らしてみても、こういう映画をイスラム社会で製作して、大丈夫なのだろうかと心配してしまう。

それはなぜかと言えば、彼らの聖典である「コーラン」は神の言葉であり、絶対的に正しいものであり、批判は許されないからであるが、この映画の主人公の妻は、ちょっとした不注意で、神に戒められている、夫以外の男性に肌を見られるという禁忌というか戒律違反を招いてしまうが、犯罪被害を警察に訴えるよりも、周りに戒律違反を知られないようにするため、警察にも訴えないという、現代社会とは思えない不可思議な行動規範を招いている。

つまり、警察に事件を親告すると、神の言葉に違反した自分が世間にさらされるという宗教的な蔑視を受けてしまうということへの葛藤があるからである。

主人公である彼女の夫、つまり主人公は警察にこの事件の解決を委ねようと希望したが、彼女の強い抵抗で結局、警察には親告しなかったのだが、主人公である彼女の夫は、なんとか妻の裸を見た犯人を見つけ出し、その犯人には幸せな家庭があるのだが、他人(女性)の裸を見たということは、イスラム社会では許されざる神への冒涜であり、ゆえに主人公は今度は自身のこれまでの態度とは逆に、その事実を警察に伝えることなく犯人の家族に伝えることで、自分が受けた屈辱、それは自分の妻が裸を見られたという戒律違反の身となり、その夫も、神自身とその神を信じる社会から蔑視される存在になったことに対する復讐を今度は、見つけだした犯人の家族に知らしめることでイスラムでは身の置き所が無くなる、つまりイスラム社会ならではの復讐劇に変わっていくのである。

唯一神を信じないわれわれ日本人からすると、自分が納得する形が一番であり、神とのかい離に葛藤することなんぞ、多くの日本人には無いと思われるが、イスラム社会では神と社会という二つの絶対的な存在と自己の内面が葛藤しなければならないという、想像すらできない社会で生きていかなければならないということだけは、良くわかりました。

同じ唯一神を信じるキリスト教徒の多いアメリカ人やヨーロッパの人々もこういう葛藤に共感できるから、評価が高いのかなあ・・・。

【ネタバレ】
自身の神への冒涜行為を家族に知らされるという耐えがたい屈辱を強要する主人公に対し、本来であれば最大の被害者である彼の妻は、その復讐劇のような仕打ちを止めさせようとし、最後には、それをしたら、自分たちの夫婦関係は終わりだと言い放って、主人公の復讐劇を止めさせた。
しかし、初老の犯人は家族の前で、その屈辱的な復讐劇を実行されなかったのであるが、もともと悪かった心臓に発作がおきて、倒れてしまう。
主人公は妻の最後通牒に従い、自分たちの舞台に復帰するのであるが、夫婦関係が元に戻るとも思えない感じで、映画は終わるのであった。

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