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2017年7月13日 (木)

【書評】羊と鋼の森 宮下奈都/著

Hituji

知らないというのは、素晴らしいことに出会える最大の要素ということをまたも気付かせてもらえた。
言い換えると、学習能力がないおかげで、自らが陥りがちな勝手な期待感というか予定調和という妄想に縛られることなく、無垢な心で感動させていただいた。

この本がなぜ私の手にあるのか?忘れたころ私の手元に届くので、どういう感じの本だったかすら、予断となるべき情報が完全に欠落している状態で読み始めるのである。

「羊と鋼の森」というタイトルからイメージするのは、ファンタジーの世界のお話と勝手に推測していた。

しかし、その予想は完全に外れていた。

羊とは、ピアノの音を出すハンマーに巻かれている羊の毛のことで、鋼もピアノのパーツで、ピアノのことを指しているのだ。森とは、精霊が住む世界という意味だから、タイトルが意味するのは「ピアノの世界」ということなのだろう。

本著は、ピアノの調律師を主人公とする成長の物語である。

音楽的な素養がない私でも分にピアノとその調律という、私にとってある意味、異次元のお話しながら、素晴らしいピアノの音色は、音楽的素養がない人の心にも染み渡るように届くかのごとく、私の心の中にすうーっと入ってくれたのであった。

ひとえに著者の見事な文体のおかげである。

文体と言えば、本著の中の主人公である新米調律師が尊敬する正解的な調律師が主人公に「どんな音を目指していますか」と質問したことに対して、こう答えていたシーンが印象的でした。

「原民喜がこう言っています」
「明るく静かに澄んで懐かしい文体、少し甘えているようでありながら、きびしく深いものを湛えている文体、夢のように美しいが現実のようにたしかな文体」
「原民喜が、こんな文体が憧れている、と書いているのですが、しびれました。私の理想とする音をそのまま表してくれていると感じました」

まるで、著者自らが本著を紡ぐために目指している自らの理想を語っているかのようであり、そしてそれが私ごとき、平凡な一読者からすれば、見事に実現されて、こちらにきちんと届いていると思ってしまいました。

読後の清涼感というか、心が丸ごと清められるような感じは、日常でささくれ立つことの多い、自己中で未熟な私をまるで成長させてくれたかのような、何か優しい気持ちで満ち溢れて、大らかで心安らかな気持ちにまで昇華させていただきました。

一読をお奨めする素晴らしくて凄い小説でございました。

【内容紹介】
史上初! 堂々の三冠受賞!
・2016年 本屋大賞
・2016年 キノベス! 第1位
・2015年 ブランチブックアワード大賞

ゆるされている。世界と調和している。
それがどんなに素晴らしいことか。
言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。

「才能があるから生きていくんじゃない。そんなもの、あったって、なくたって、生きていくんだ。あるのかないのかわからない、そんなものにふりまわされるのはごめんだ。もっと確かなものを、この手で探り当てていくしかない。(本文より)」

ピアノの調律に魅せられた一人の青年。
彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

【あらすじ】
ゆるされている。世界と調和している。それがどんなに素晴らしいことか。言葉で伝えきれないなら、音で表せるようになればいい。ピアノの調律に魅せられた一人の青年。彼が調律師として、人として成長する姿を温かく静謐な筆致で綴った、祝福に満ちた長編小説。

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