【書評】ローマ法王に米を食べさせた男 高野誠鮮/著
著者は、羽咋市役所の職員、つまり地方公務員である。
羽咋は石川県にあって、能登半島の付け根にある地方都市である。
石川県は妻の故郷であり、何度も通過したことがある場所であるのだが、ローマ法王が食べた米があるとは知らなかった。
いやいや、話がそれたが、この著者の方がすごいと思ったのは、スーパー公務員と言われ始めたのが、50歳を過ぎてからであるということ。
どうやら地方の市役所では目立ち過ぎていたのか、出る杭は打たれる状態であり、左遷気味に48歳で農林水産課に飛ばされたところからこの話は始まる。
とにかくこの方の発想は、ユニークを通り越して、型破りなのである。
普通なら予算は1円でも多い方が良いのに、たった60万円の予算で過疎の村を再生するプロジェクトを立ち上げたり、そしてその低予算でのプロジェクト立ち上げの代わりに市長に談判して市役所内では会議を開くことなく、自分だけで意思決定できるようにしたりと、おおよそ市役所らしくない、民主的なプロセスを無視した、それゆえに強引に物事が進められる仕組みを手に入れ、そこから自身の大胆な発想を次々と実行し、その中に本著のタイトルとなったローマ法王に米を献上するとか、ありとあらゆる公務員の仕事とは思えない斬新なアプローチで最終的に過疎の村の再生を成し遂げているのである。
しかも、そんな型破りな手法だけでなく、執念深いともいえるほどの粘り強さもあるのもこの方のすごいところだ。
例えば、反対派で凝り固まった農村の意識を変えるため、反対意見しか出ないのに、毎週のように村人を集めては集会を開いて、こんこんと話を聞き、丁寧に説明を行い、それで徐々に皆を納得させたとか、ありとあらゆる海外メディアに扱ってもらえるかどうかも分からないような地方のニュースを伝えまくって、海外からの取材で国内のマスメディアにニュースで扱ってもらえるようにしたりとか、その発想の自由さ、いや奇想天外さとそれをやり続けるパワフルさは、他に例をみないといってよいだろう。
もうアラフィフだからと、最近はすっかり消極的・保身的な私なんぞ、恥ずかしくて、本著の書評など書ける立場ではないのであるが、素直に感動したし、パワーをもらえた気がしたので、恥を顧みず、記事掲載した次第である。
とにかく、今度、金沢帰省したら、羽咋の神子原地区に寄ってみようっと。(ローマ法王が食べたお米、まだ買えるかな?)
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