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2017年3月19日 (日)

【映画】この世界の片隅に(日本)

傑作です。やはりロングランには訳がある。日本人に生まれてよかった。こんな素敵なアニメ映画を作る現代の日本人とその原作となる80年前の苦しい戦時下を耐え忍び、そして見事に立ち直ったご先祖様、さらにこの素晴らしい映画を鑑賞できる自分を無事に育ててくれた家族や友人のいる日本国そのものに

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第2次大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前を向いて生きていく女性すずの日常を描いた、こうの史代の同名漫画をアニメ映画化した人間ドラマ。『マイマイ新子と千年の魔法』で評判を呼んだ片渕須直監督が、徹底した原作追及、資料探求などを重ね、すずの生きた世界をリアルに描く。主人公の声をのんが演じる。

【ストーリー】
昭和19年、18歳の少女・すず(声:のん)は生まれ故郷の広島市江波を離れ、日本一の軍港のある街・呉に嫁いできた。戦争が進み様々な物が不足していく中、すずは工夫をこらして食事を作っていく。やがて日本海軍の根拠地であるため呉は何度も空襲に遭い、いつも庭先から眺めていた軍艦が燃え、街は破壊され灰燼に帰していく。すずが大切に思っていた身近なものたちが奪われていくが、日々の営みは続く。そして昭和20年の夏を迎え……。

【作品データ】
製作年 2016年
製作国 日本
配給 東京テアトル
上映時間 126分
映画公式サイトへ

【スタッフ】
監督 片渕須直 
脚本 片渕須直 
原作 こうの史代 
企画 丸山正雄 
プロデューサー 真木太郎 
キャラクター・デザイン 松原秀典 
作画監督 松原秀典 
撮影監督 熊澤祐哉 
美術監督 林孝輔 
音楽 コトリンゴ 
録音調整 小原吉男 
音響効果 柴崎憲治 
編集 木村佳史子 
監督補 浦谷千恵 
色彩設計 坂本いづみ 
画面構成 浦谷千恵 
動画検査 大島明子 

【キャスト】
北條すず(旧姓:浦野) のん(能年玲奈) 
黒村径子 尾身美詞 
北條周作 細谷佳正 
黒村晴美 稲葉菜月 
北條円太郎 牛山茂 
北條サン 新谷真弓 
水原哲 小野大輔 
白木リン 岩井七世 
浦野すみ 潘めぐみ 
浦野十郎 小山剛志 
浦野キセノ 津田真澄 
森田イト 京田尚子 
小林の伯父 佐々木望 
小林の伯母 塩田朋子 
知多さん 瀬田ひろ美 
刈谷さん たちばなことね 
堂本さん 世弥きくよ 

【感想】
まず、広島弁(性格には安芸弁)にグッと引き込まれた。なぜなら、両親とも広島出身で、親戚もみんな広島出身で、いつも聞いている方言と一緒だったのだ。
なので、最初から懐かしさ満開というか、この世界の片隅に完全無欠に引き込まれた。

ほのぼのとした少女時代の話から始まり、とにかく笑いのシーンが豊富で、そのゆるさは日本人でないとわからないだろうな。
そして何より主人公すずがほのぼのとしていて、その声役がのん(能年玲奈)というのが、またナイスキャスティングでしたね。最近彼女をテレビで観てないが、良い仕事してましたね。

私が最近観たアニメーション映画は、「モアナと伝説の海」、「SING/シング」といずれもアメリカのミュージカル調のアニメーション映画で、エンターテイメント性が高く、面白くて、十分満足したつもりであったが、それに比べればはるかに地味で、まさに日本的な二次元アニメなのであるが、その歴史的事実の基づく戦争の不条理さの圧倒的なリアリティとCG全盛時代に逆らうかのごとくの手作り感満載の古きアニメーションに込められた熱き想い。
日本のアニメーターの傑作と言えるほどの珠玉の作品に出会って幸せでした。

【ネタバレ】
主人公すずの夫周作は、海軍の事務方の役人であったが、ついに召集されて、訓練を受けるために呉を離れることになり、いよいよ米軍の空襲も激しくなり、連日連夜の空襲となっていく。
すずの義父が空襲で怪我して、入院しているので、一族で見舞いに行くと、空襲があって、病院近くの防空壕で難を逃れた。ホッとして、防空壕から出て、軍艦を眺めていたとき、米軍が落としていった時限爆弾がさく裂し、真っ白になる。
一緒にいた姪の晴美は爆死し、すずも右手を失う。晴美の母である義姉の径子に責められるシーンは、観ているこちらも辛くなる。
右手を失い、家事が上手くできなくなったすずは広島に帰ることを決意し、その当日の朝、広島方向から巨大な閃光が、そう広島への原爆投下があったのだ。
そして、8月15日の玉音放送で敗戦を聞いたすずは、激怒する。「なんのための戦争だったのか!」
原爆で焼け野原となった広島ですずは復員した夫の周作と再会する。そこに原爆で母を失った汚い孤児と出会う。
孤児の母は原爆で右手を失って、最後は死んだのだが、同じように右手の無いすずを見て、懐いたのだ。そのまま、呉まで連れ帰り、新しい家族と迎えられ、孤児のしらみにみんなで慌ためくところで、映画は終わった。

【歴史的補足】
 軍事施設などへの爆撃でなく、一般市民に対する爆撃を行うことを、無差別爆撃という。
 先の戦争で、日本はアメリカ軍にこの無差別爆撃を何百回もいろいろな都市で行われ、それこそ百万人近くの死傷者が出たのである。
 戦争を始めた報いであるのだが、それ以上に、重要な歴史的事実は、この無差別爆撃の歴史に日本が大きくかかわっているのだ。

 無差別爆撃の歴史を紐解くと、世界最初の無差別爆撃と言われているのが、ピカソの有名な絵「ゲルニカ」を描かせることになったナチス空軍によるスペイン内戦時のゲルニカ無差別爆撃である。

 そして、この無差別爆撃を発展させたのが日本軍による重慶爆撃である。
 中国の首都南京を陥落した日本軍であったが、中国は首都を内陸部の重慶に遷都し、それに対し日本軍は、陸軍が進撃できない内陸であったが故に、空軍で足掛け3年、毎日のように爆撃をしたのである。

 その時、開発されたのが焼夷弾(しょういだん)と言われる、爆発するのではなく、木造家屋を燃やすために燃える爆弾である。実はこの燃やす爆弾を実質的に進化させたのは、重慶爆撃を行った日本軍なのである。

 結局、この焼夷弾は、日本の都市を爆撃するのに最適であることから、最後は米軍が多用し、空襲を受けた日本の都市は丸焼けになったのは、本作品にもあったとおりである。

 主人公が自宅に落ちた焼夷弾を布団とバケツの水で消火するシーンがあったが、実際には、消すことがかなり困難な粘着性のある油の塊で、家屋に粘着したら、消火は極めて困難、万一体に付いたら、簡単には振り払うことなどできず、そのまま燃え続けるというのが実態であったことを知っていた私は、あのシーンは肝を冷やして見ていた。(簡単に消せない焼夷弾を日本軍が開発し、それを米軍が真似して、だから日本は空襲で丸焼けになったのである。)

 世界一の戦艦たる大和にはロマンも感じるが、そうでない極悪な兵器も競って作っていたという事実を久しぶりに思い起こさしてもらった。

 そういう不都合な事実ってやつも知らない人が多いだろうが歴史にはあるんだよなあ。

 そういえば、終戦直後の呉の街を写したシーンに、大極旗(大韓民国の国旗)が一つ掲揚されているように見えたのだが、見間違いなのだろうか?もし、大極旗であるなら、いったい、どういう意味だったのだろうか?

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