【絶賛】五郎治殿御始末 浅田次郎/著
男の生き様を書かせたら、右に出る者がいないと思っている浅田次郎さんの時代短編集である。
時代ものではあるが、比較的新しい幕末維新直後の明治初期という近代の話ばかりで、歴史的な有名人は出てこない地味な話なのですが、これが見事なまでに全編珠玉の名作であった。
全短編六作品を私の主観を交えて簡単に紹介したい。
●椿寺まで
最後まで武士らしく戦い瀕死の重傷を負った幕吏ながら、明治では商人として維新の後始末として、同僚の遺児を密かに育てているという目頭が熱くなるお話
●函館証文
私にとっての短編時代小説の最高傑作
●西を向く侍
私にとっての短編時代小説の最高傑作
●遠い砲音
私にとっての短編時代小説の最高傑作
●柘榴坂の仇討
私にとっての短編時代小説の最高傑作
●五郎治殿後始末
私にとっての短編時代小説の最高傑作
頭がおかしくなったのではないかと訝しむかもしれませんが、私の中での最高傑作が、本短編集で読み進める毎に5回も更新されたのです。
この短編集で描かれた日本の武士道とは、明治維新によって、武士という特権を失って、平民となった新しい世の中において、真の男として、その真価が問われたということを、様々な種類のその後の生き様をもって、まさに見事なまでにあぶりだしてくれているのです。
巻末の言葉が端的に本作品のエッセンスを表していたので引用します。
男の始末とは、そういうものでなければならぬ。決して逃げず、後戻りせず、能う限りの最善の方法で、すべての始末をつけねばならぬ。幕末維新の激動期、自らの誇りをかけ、千年続いた武士の時代の幕を引いた、侍たちの物語。表題作ほか全六編。(解説・磯田道史)
追記:
ここのところのくそ忙しさに心がささくれ立っていたのだが、この本を読んで、そんな私の小さくみみっちい生き様が恥ずかしくなりましたわ。(笑)
追記2:
「ごろうじどのおしまつ」というのがこの本のタイトル。読めば納得のタイトルなのだが、このタイトルでは絶対に大ヒットはしないよなア・・・。
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