バカロードな走り
神宮外苑24時間チャレンジが終わって、肉体的な疲労感は相当に強いのであるが、精神的には実に充足している。
その理由は明白である。
「バカな走り」と「タフな走り」という相反する両方のことができたからだ。
およそ今までの人生で、バカなことをした記憶がない私にとって、今回のバカなことは珍しいことなのである。
例えば、大学受験では受けた大学全部に合格したし、告白して振られた記憶もないが結婚している。つまり、安全パイな生き様が私の性分なのである。
ところが、神宮外苑の24時間走では、最初から実力的にも、体調的(直前ハードトレーニングでふくらはぎ痛あり)にも、トップ争いなどできないし、する気もなくて、最後尾でスタートしながら、ウルトラの師匠と勝手に慕っているバカロードさんに追いつくと、「ずいぶんとゆっくりじゃないですか?」と師匠を煽って、100kmでやっとサブテン(10時間切り)レベル二人の大暴走をなりゆきで始めてしまったのでした。
キロ5分を切るペースに上げて走っていると、24時間走らしく、自重して走るランナーを後目に抜き去ることになって、気がつくと女性の優勝候補までも抜き去った。
「こんな飛ばしたら、あかんて」と後ろからつぶやく師匠も、バカロード道創始者らしく、決してスピードを緩めない。
少し身体も温まって、凝り固まっていたふくらはぎの調子も出てきた私は、「まだまだ」とバカロード魂が乗り移ったかのように、攻撃的に走った。
それでも、100kmを6時間台や7時間台前半の実績のある優勝候補ランナーには追いつけない。なんだかんだで実力差は歴然である。
前を追うべく、さらにギアを上げたのだが、師匠は離れない。今回はバカロード師匠とのガチンコ勝負を申し込んでおり、私なら勝ちにこだわって、自重するだろうに、さすがは師匠である。不肖の弟子の暴走に付き合ってくれているのだ。こんな嬉しいことはない。もはや記憶は定かではないが、この時点ですでに私は涙を流して走っていたかもしれない。
師匠「ペース早いなあ・・・」私「キロ5分ちょっときってますね。まあ何とかなるんでは?行くとこまで行きましょう!」師匠「こりゃ、完全につぶれるな」
さらに、師匠がまたつぶやいた。「あっー、かずさん、前方は優勝候補ですよ、まさか抜かさないよね?」私「もちろん、行きます!(笑)」
優勝した石川選手など、序盤は抑え気味に走る有力ランナーを順々に抜いて行った。もちろん彼ら自身は余裕のペース、キロ4分後半を刻んでいるだけなのだが、フルマラソンでサブ3.5程度のこちらは、完全なる全力疾走。息が上がるのは直である。
私の左手首のGPSはキロ4分40秒のラップを表示したところで、前を追いたくても、もはやスピードアップはできなくなった。
「だけど、まだ、ハヤトさんを抜いてないですね。」と私は師匠に呟いたのであるが、このあたりがすでに私の限界であった。
なんとかキロ5分ペースでしばらく走っていたが、この程度のスピードでは、徐々に優勝候補ランナーに抜かれ始めたのだが、もはや限界を超えている私にはどうすることもできない。
1時間を経過したあたりからは、まだ余力のあるバカロード師匠に先行してもらい、付いて行こうとするが、息が上がり、脚も終わった私は離されるばかりの展開になってきた。
かすかな可能性にかけた100km通過時点での自己ベスト更新を目指しての私の思いつき暴走は破たんをきたし始めたのだった。
周回ごとにラップが悪くなっていく私は、バカロード師匠の姿も見えなくなり、ずるずると後退していった。
フルマラソンとほぼ同じ42km地点の通過は3時間52分。50㎞の通過は4時間48分、気がつくとキロ6分も切れなくなって、60km通過はかろうじて6時間を切ったが、70km通過は7時間を超えてしまった。
最初の爆走2時間の間に、「速いですねえ」と言われながら、3,4回も追い越したなじみのランナーさんたちにも、すでに余裕で抜かれ始めた。立場は完全に逆転した。
その後もペースは落ち続け、100kmサブテンも不可能な展開どころか、もはや、いつから歩き出そうかという情けない葛藤の世界に陥っていた。
それでも、歩かないと決めて耐え続け、ほとんど歩くのと同じくらいのスピードに落ちながら、とりあえず走り続けた。
ただただ一歩ずつ足を出して、何とか歩かないように粘っていると、私に合図を送る見物客がいた。なんとマラソン弟子が応援に来てくれたのだ。
スピードは戻らないが、元気が出た。持つべきものは弟子だ(笑)
次の走りの転機は、音楽プレーヤーとともにやってきた。
2013年のスパルタスロン用にセレクトした元気の出る楽曲に、昨日、同僚から差し入れてもらった星野源さんの楽曲の入った音楽プレーヤーを午後9時から聞き始めてから、マインドが変わっていった。
ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の主題歌「恋」が流れてくると、いきなりテンションが上がった。聞こえない程度に口ずさみながらの走りは、まだまだ低速走行のままであった。(笑)
それにしても、2人での暴走が終わってから7時間余り、バカロード師匠の姿を見ていないないのだが、どうしたんだろうか?(後編「タフな走り」に続く)
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