オートファジーを体現した男
2016年ノーベル生理学・医学賞の受賞が決まった大隅良典・東京工業大学栄誉教授の受賞理由は、細胞内部の自食作用、オートファジーのメカニズムの解明だ。
この「オートファジー」現象を自らの身体で実証した男を私は知っているので、ご紹介したい。
その男の名は、「バカロード」。私が敬愛してやまないウルトラランナーのおひとりである。
2011年に開催された、ランニングで北米大陸5200kmを横断するというレースの33日目に彼が綴った手記から引用する。
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気がつくと脚のフトモモ周りがすごく細くなっています。サポートクルーの菅原さんの言葉を借りれば「自分を喰う」状態に突入してるんだそうです。
体脂肪を消費尽くし、さらにエネルギー源を必要とする際に、筋肉を運動エネルギーに変えてしまう・・・
つまり筋肉がどんどん痩せていってしまう。痩せ細った脚には、笑うほど力が入りません。
スタート直後からドンケツ独走です。少し風が吹くとよろめきます。体重を支える力なく、右に左にふらふら蛇行します。制限時間に間に合うスピードが出ません。
今日は84キロの長丁場ですが、20キロあたりから何度も何度も全力疾走を入れ、関門に届くよう粘ります。「粘る」そんなことくらいしか武器がないのです。
スピードなく、体力なく、暑さに弱く、坂は登りも下りも遅い。
ランナーとして何の取り柄もないぼくには「根性」を源資とする粘りしか切れるカードがないのです。
15時間近く粘りに粘って、夕暮れの街にたどり着きました。関門10分前です。ギリギリの攻防でした。
フトモモはさらに一回り細くなってしまいました。また自分を喰らってしまったのかな。
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【北米大陸横断レース ステージ33(7月21日) 距離84.2㎞ 通算距離2,381.9km】
オートファジーを自ら体現していることを見事に表している一文であったので時節柄、ご紹介した次第である。
むろん、本当にすごいのは、こんな状態でありながら、その後も1日平均75kmの距離を最終的に70日間連続で走りきって、見事に北米大陸横断を成し遂げられた日本人2人のうち一人ということなのであるが・・・(笑)
それにしても、限界を超えて走るために自らの太ももを喰わせながら走り続けるその根性と執念たるや、これこそまさに神の領域を走るなのではないか?
追記:バカロード様、間違ってないでしょうか?
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