【書評】剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎 高殿 円/著
歴史小説が大好きなのであるが、この井伊直虎の小説は初めてである。
副題は「戦国の女領主・井伊直虎」
そもそも来年のNHK大河ドラマに決まるまで、弱肉強食の戦国時代に女性の領主がいるとは知りませんでした。
というわけで、実に楽しみな読書であり、そして予想以上に面白い話で驚きました。
井伊直虎は、徳川四天王とうたわれた徳川家康の家臣である井伊直政の養母で、三河との国境に近い遠江(今の静岡県西部)の井伊谷城で城主として、今川、武田、徳川といった戦国大名に挟まれた小規模領主として、蹂躙殲滅されることなく、生き残ったという確かな実績のある女城主でした。
非常に狭い地域を舞台としており、NHK大河ドラマとして、今までのように全国展開できるような話ではないので、ドラマとしてダイナミックさには欠けそうで、少し不安でもありますが、女城主が生まれた背景は、井伊谷は抗争が激しく、城主候補の一族の武将が次々と倒れるということがあったわけで、そういう意味では話の展開としては、あるかな?
さてこの小説の中での直虎は予知能力のある不思議な姫さまとして扱われ、でも実際には不吉な予兆を感じるだけで、その予兆から逃れられないという、当時の女性的な境遇を二重に体現させられつつも、井伊一族の存続を願ってやまない、そんな苦悩する姿が、ファンタジーを得意とする著者によって、みずみずしく描かれているのである。
生涯、ただ一度の紅であった。
歴史小説っぽくないのが、実によい味を出してくれていて、読み応えのある小説でした。
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