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2016年6月12日 (日)

【映画】ズートピア(ディズニー)

夢は諦めなければ叶うし、真の友情もはぐくめるというテーマの娯楽アニメーションとして完成度が高いだけでなく、私にとっては奥の深い衝撃的な映画でした。

Poster2

動物たちが人間のように暮らす文明社会“ズートピア”を舞台に、警察官になりたいと願うウサギのヒロイン、ジュディとキツネの詐欺師ニックが出会い、巻き起こす騒動を描くディズニー・アニメーション作品。ジョン・ラセターの製作総指揮のもと、『塔の上のラプンツェル』のバイロン・ハワードと『シュガー・ラッシュ』のリッチ・ムーアが共同で監督を担当。

【ストーリー】
高度な文明が発達した動物たちの楽園ズートピア。そこは、誰もが夢を叶えられるところだった。田舎町バニーバロウで育ったウサギのジュディは、幼い頃から、世界をより良くするために警察官になりたいと思い描いていた。サイやカバといった大型動物だけが警察官になっているものの、ジュディは警察学校を首席で卒業。ウサギとして初めて警察官になり、ズートピアに赴任する。しかし、動物たちの連続行方不明事件が発生し、捜査に向かうのはサイやゾウといった大型の同僚たちばかり。スイギュウの署長ボゴはジュディの能力を認めようとせず、駐車違反の取締りを命じる。そんな中、街で困った様子のキツネの親子を助けたところ、彼らは詐欺師だった。だまされショックを受けるジュディに、詐欺師のニックは、何にでもなれると思っていても無理だと言い放つ。落ち込むジュディだったが、諦めずに、未捜査のままになっているカワウソのオッタートンが行方不明になっている事件の捜査に名乗り出る。ジュディを応援するヒツジのベルウェザー副市長の後押しもあり、ボゴは期間は2日間のみであること、失敗したらクビにすることをを条件に、やむなく捜査を任せる。チャンスを掴んだものの、手がかりは皆無だった。そこでジュディは、街に精通しているニックに協力を依頼。秘密を握られているニックは、渋々彼女の捜査に付き合うことにする。ニックの情報網を駆使し聞き込みを続けるうちに、ついにツンドラ・ラウンでオッタートンの痕跡が残る車を見つける。しかしその車はツンドラ・タウンの闇のボス、ミスター・ビッグのものであり、ジュディとニックは捕まってしまう。何とかこの危機を切り抜けたジュディとニックは、新たな手がかりを掴むとともに、ズートピアに何かが起ころうとしていることに気付く……。

【作品データ】
原題 ZOOTOPIA
製作年 2016年
製作国 アメリカ
配給 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
上映時間 109分
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【スタッフ】
監督 バイロン・ハワード 、 リッチ・ムーア 
共同監督 ジャレド・ブッシュ 
製作総指揮 ジョン・ラセター 
製作 クラーク・スペンサー 
プロダクション・デザイン デヴィッド・ゲッツ 
音楽 マイケル・ジアッチーノ 
主題歌 シャキーラ 
日本版主題歌 Dream Ami 
ビジュアル・エフェクツ・アーティスト 成田裕明 
日本語字幕翻訳 石田泰子 
プレビジュアリゼーション・アーティスト/レイアウト マット鈴木 
ライティング/コンポジティング・アーティスト 吉田かおり 

【キャスト】
ジュディ・ホップス ジニファー・グッドウィン 
ニック・ワイルド ジェイソン・ベイトマン 
チーフ・ボゴ イドリス・エルバ 
クロウハウザー ネイト・トレンス 
ライオンハート市長 J・K・シモンズ 
ベルウェザー副市長 ジェニー・スレイト 
フィニック トム・タイニー・リスター・Jr. 
フラッシュ レイモンド・パーシ 
オッタートン夫人 オクタヴィア・スペンサー 
ガゼル シャキーラ 

【吹き替え】
ジュディ・ホップス 上戸彩 
ニック・ワイルド 森川智之 
チーフ・ボゴ 三宅健太 
クロウハウザー 高橋茂雄 
ライオンハート市長 玄田哲章 
ベルウェザー副市長 竹内順子 
マイケルタヌヤマ 芋洗坂係長

【感想】
 夢を諦めず、友情もはぐくむというテーマで、子供と見ても楽しくためになるストーリー性も十分な面白いアニメ映画でした。が、それ以上に、深い意味を持たせてある(製作者は意図していないようだが)、素晴らしい映画でしたね。

 ズートピアとは動物社会の楽園「ユートピア」という意味なのだろう。
 擬人化した動物たちが繰り広げる人間、いや動物模様が実にわかりやすく、ズートピアの都市構造は、見事なまでにバリアフリー化されていて、肉食獣と草食獣、小型動物と大型動物が見事に共生しているかのような理想的な動物の理想郷を築き上げたかに見えるたズートピアであっても、社会の矛盾や不条理が擬人化した動物ならではの、分かりやすさをもって、まさに説明しなくても子供でも分かるように、描かれている。
 そうした細やかなディテールのうえに、夢をかなえた社会正義の実現機関たる警察においての、不条理な差別に闘いながら、キツネの詐欺師ニックとまさに名作「48時間」とそっくりなノリで、伏線がいっぱい張られた難事件を少しずつ解いていくとともに、交わることなかった犬猿の仲の二人に友情が芽生えていく。
 最後の30分はまさに、大どんでん返しに向けて、観客の心をがっちりつかんでの大団円は、ディズニーアニメーションならではの子供向けの楽しさに、大人も楽しめ、考えさせる奥の深い内容と感動を得られる見事なまでの作品でありました。

 素晴らしく緻密に計算された世界観を構成したうえで、飽きさせない、いや惹きつけられて、観ているこちらは主人公たちに共感して、楽しませてもらった本作品に感動しながら、エンディングタイトルの時間で余韻に浸りながら、私は別の違和感がもたげてきたのも、正直な感想である。

<ここからは私の傍論(いや暴論か(笑))>

 ディズニーが描いた理想的な動物社会は、人間にとっても理想的な社会として提示されたわけなのであるが、私は、人間は他の動物を超えた動物であると思いながらも、本能的には動物である部分を決して抜け出すことはできないと思っている。

 少なくとも、現在まで継承されているDNAは、継承されるべきDNAだった訳で、ここで論じると、現在の人間社会に真っ向から反論してしまうので、差し控えたいが、例えば、肉食獣は、躊躇なく草食獣を捕食するものしか、生き残れなかったわけで、そうした本能を失っているかのような、ペットたる犬や猫は、ペットでなければとても自然界では生き残れそうにないのは、明らかであろう。

 多くの鳥が、つがいとして、「おしどり夫婦」という言葉もあるように、仲良く子育てをしているが、夫婦協力する気のない性質を持つ個性的な鳥が誕生したとしても、卵を温めたり、えさをひなに運ばない鳥は、結局種を残せないわけで、それがまさに生き残って継承されたDNAということだろう。

 それでも、子育てしない鳥として、有名な「かっこう」というのもいるが、他の種の鳥に卵を預けるという本能が遺伝しているもののみ、生き残っているということだ。(自分で子育てしたいかっこうが生まれても、自分と同じ種の相手はそう思わないわけで、結局、自分で子育てしようとする遺伝的性質、すなわちDNAはやはり継承されない)

 というようなことを考えている私からすると、ズートピアで描かれた理想の動物社会は、「人種のるつぼ」たる人工国家アメリカを彷彿させながらも、ダーウィンの進化論を否定するキリスト教原理主義者のような、神の下での人間平等、いや動物平等を臆面もなく、理想社会として描いていることに対しては、私的には自然すらも人間が理想を持てばコントロールできるというような創造主然とした傲慢さすら感じてしまうのであった。(ズートピアでは、動物の理想環境、たとえばツンドラや熱帯雨林を作りだすために人工的にそういう環境を造りだしていたし、アメリカそのものの大量消費、車中心社会であったりと、野生動物とは真逆の世界、エコロジーらしさのかけらもないアメリカ的な社会となっていたと思うのは、ズートピアの素晴らしい世界観に感嘆しながらも、気になって仕方がなかったのである(笑))

 そした世界観はSFである以上、ジブリ映画でも同じようにつっこみどころ満載となってしまうのだが、夢を諦めず、頑張って生きていく、そういうメッセージを子供には是非とも持ってもらいたいと思ったし、主人公ジュディの両親、実に善良で真面目な一市民タイプながら、子供の分不相応な夢を諦めさせようとする辺りは、社会人にもうすぐ羽ばたこうとする子を有する私としても、身につまされる寓話として、心したいと思ったりした。

 ともかく、ズートピアの世界観に対し、現代アメリカのTPPにみられるような理想社会という名の自分中心な世界の押しつけ感を感じて、ごちゃごちゃ批判的なことを書いたが、「夢を諦めない」、「相手を信用し友情をはぐくむ」、「平等な社会は自分から作っていく」というようなメッセージを堅苦しさのない、面白おかしく伝えてくれている本作品は、やはりアメリカらしい、アメリカでなければ作れない、作品だと思いました。

なので、大人の方にも観ていただきたい名作ですので、ぜひ観てください。

追記:
 映画の中では、ナマケモノの仕事ぶりの遅さを大いに笑いのネタにしていたが、これは、逆説的にそうした傾向のある高齢者や障害者への温かい配慮を喚起させる見事な演出だと思いまいた。

【ネタバレ】
 ジュディが失踪したかわうそのオッタ―トンの捜査していく中で、かわうそが凶暴化し、その被害者であったヒョウがジュディたちの目の前で凶暴化した。
 副市長の協力で防犯カメラを解析し、凶暴化したヒョウは、刑務所に収監されたことを探り合てた。
 ジュディとニックがオオカミが看守の刑務所に潜入すると、ズートピアから失踪していた全ての動物たちが収監されていたことが判明し、しかもそれはライオン市長の指示であることを聞いてしまう。
 そこで、ジュディのスマホが鳴り出し、万事休すと思われたが、トイレから脱出し、警察総動員で刑務所に立ち入り、ライオン市長を逮捕。
 ジュディは記者会見でズートピアのヒロインとなるが、ズートピアの動物のうち、肉食動物だけが凶暴化する事件への見解が「動物本来の遺伝子の可能性」と発言してしまい、ズートピア中を不安に陥れるとともに、ジュディの相棒として警察官になろうとしていたキツネのニックまでも傷つけてしまう。
 警察のヒロインとなったジュディであるが、自信をなくして、故郷に帰って、両親のニンジン作りを手伝うことにした。
 そこで、うさぎすら凶暴化させる「夜の遠吠え」という別名を持つ花のことを知り、この花を意図的に肉食獣に投与されたと気が付き、即座にズートピアに戻り、ニックに謝り、真犯人を一緒に捜査する。
 悪いヒツジのギャング団が「夜の遠吠え」を栽培している現場を押さえ、証拠を警察に持っていこうとして、最終的に、黒幕の登場で失敗する。
 黒幕は、おとなしいヒツジの副市長で、1割の肉食獣より9割の草食獣による政権転覆を狙ったものであったが、ジュディとニックの機転で、窮地を脱し、副市長一味は逮捕され、事件は解決した。
 ニックはキツネとして、初めてズートピア警察学校を卒業して、映画は終わった。

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