【書評】あの夜、君が泣いたわけ 野沢和弘/著
副題
「自閉症の子とともに生きて」
内容
自閉症の子の父として、ジャーナリストとして、著者が「障害」をめぐって出会った経験を綴る書き下ろしエッセイ集。「原風景」ともいえるわが子との出来事を回想した表題作のほか、静かで温かみ溢れる筆致のなかに、人のもつ本質的な「やさしさ」や人生における「障害」の意味、多様な人々が「ともに生きる」社会のあり方を感じさせる18編を収録。 (「BOOK」データベースより)
著者略歴 野沢和弘
1959年、静岡県熱海市生まれ。1983年、毎日新聞社入社。津支局、中部本社報道部、東京本社社会部、夕刊編集部長などを経て、2009年から論説委員。植草学園大学客員教授、NPO法人PandA‐J副代表、元千葉県障害者差別をなくすための研究会座長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)(「BOOK著者紹介情報」より)
読書好きの障害児の父親として、ずいぶんと自閉症に関する書籍を読んできたが、本著は異色の本である。
自閉症の子を持つ親よりも、新聞記者を経て大学教授や研究会座長としての障害に関わる公的な顔が有名な著者であるが、自身の子への接し方への迷いやその逆としての新たな発見、あるいは社会人として障害者に対する自身の偏見などのエピソードを、ユーモアを交えながら、それでいて赤裸々と、心の奥底に緩やかに浸透するような文章で綴られている。
あとがきで「ジャーナリズムのにおいのすることはできるだけ排除し、日々のニュースを追っている新聞が見落としてきたことに目を凝らしたつもりだ。どうにかしたい、どうにかしなければならない。そう思いながら同じ時代を生きている人々のことをかいた。そうした人がこれから少しでも増えていってほしいと思う。」
うまく表現できないのであるが、障害者問題を扱うジャーナリストで障害者行政を学識経験者として統率する立場でありながら、自身が障害児の父親であり、障害に関わるいろいろな視点を持っているはずの著者ですら、結局のところ障害者自身の視点にはなかなか立ち得ないもどかしさを外連味なく、むしろユーモアを交えながら、優しく語ってくれている。
他者の立場に立っているかのような著者ですら、うまくいかないのであるから、鈍感でわがままな私にできるわけがないと思った。(笑)
もっと短い書評とすれば、「ほんわりとしつつ、ちょっと考えさせられるエッセイ」でした。
あの夜、君が泣いたわけは、本当になんだったんだろうか。少しは私も心優しい大人になれているだろうか。
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