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2015年4月26日 (日)

【書評】「戦場体験」を受け継ぐということ 遠藤美幸/著

【書評】「戦場体験」を受け継ぐということ 遠藤美幸/著
「貴官にやってもらいたいことがある。守備隊が最期を迎えたら、貴官は陣地を脱出して、龍陵の司令部へ戦況報告に行ってもらいたい。」(守備隊長)

「大隊長の命令ではありますが、木下はお受けできません。最後まで守備隊将兵と行動をともにしたいと思います。」(木下中尉)

「貴官の気持ちはわかる。だが、もう少しよく考えてもらいたい。ここで全員死んでしまったら、長い間の守備隊の苦労が師団にわかってもらえないではないか。それに戦死した将兵の遺族に対して、だれがこの状況を伝えるのか。それから後世に対しても、子々孫々に至るまで、この拉孟の戦闘の模様を伝えねばならぬ義務があると思うが」
「このことは、松井連隊長殿にも師団司令部にもすでに報告してあるので、貴官にぜひやってもらいたい。これは守備隊長の命令だ。」(守備隊長)

「・・・」(木下中尉)

「もし内地に帰る機会があれば、戦死した将兵の遺族にも戦闘の模様を伝えてもらいたい。それから、脱出するときには1、2名、伝令を連れて行け」(守備隊長)

もはや中尉は断ることができなかった。
「はっ、承知しました」と答え、敬礼をして壕を出た。(本著からの引用)

【概要紹介】
副題は「ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩く」

1941年12月8日のハワイ真珠湾とマレー半島への奇襲攻撃から半年たらずで、日本軍はマレー半島を席巻して、シンガポールを、次いでスマトラ、ジャワ島、あわせてフィリピンを占領、翌42年5月にはビルマ(現ミャンマー)全土を制覇した。

一方で、蒋介石の率いる中国国民政府は、日本軍により首都・南京を追われ、奥地の重慶に本拠を移した。
その国民政府を支援するため、米英両国は「援蒋(えんしょう)ルート」を通じて軍需物資を送った。
その最大のルートが、ビルマのラングーン(現ヤンゴン)から北上して中部マンダレー、ラシオを通り、中国国境を越えて雲南省に入り、昆明に至る「ビルマルート」であった。

その「ビルマルート」を遮断するため、四二年5月、日本軍は中国雲南省西部の軍事拠点・拉孟(らもう)に陣地を築き、1300人の守備隊を配備した。しかしほどなく太平洋戦線での米軍の反攻が開始され、日本軍は後退を余儀なくされる。

そうしたなか、44年6月、米中連合軍は新たな「ビルマルート」の奪回作戦を開始、中国軍4万人が拉孟陣地を包囲する。
100日にわたる死闘の末、9月7日、拉孟守備隊は全滅した。その拉孟全滅戦の実相が、奇跡的に生き残った将兵の証言により、ここに初めて明らかにされる。

本書は、その将兵と〝奇縁〟によって結ばれた戦後世代の女性研究者による記録である。(amazonサイトの内容紹介からの引用)

【ひと言】
今の世の中でどんなに厳しい状況に陥ろうとも、太平洋戦争の最前線の厳しさに比べれば、比較にならない、いや天国みたいなものだと思う。
すなわち、食料も弾丸も援軍もなく、逃げることはもちろん、生きる望みすらない状況でその場に踏みとどまって職務を全うするしかなかったのであるのだから。
(実は、自分が苦しいときに、戦争で死ぬわけじゃないんだといつも自分自身を奮い立たせているのだ(笑))

そういう過酷な帝国主義の時代があったということを知る意味でも多くの人に読んでもらいたいのであるが、何せ前提となる知識が必要なのがノンフィクション書籍の難しさである。

何度も映画評で書いてきたが、戦争ものは映像や映画の方が、理解が早く向いているのだが、商業的な成功が期待できない題材、さらには当時を体験した生存者が一人の状況となっては、それもままならない。

本著における光明は、戦争を知らない戦後世代の女性が不思議な縁から本著をまとめるに至って、それが完成したということだ。そうしたことをなし得る日本と日本人を誇りに思いたい。

【追記】
奇しくも、韓国と歴史認識で軋轢が起きている慰安婦について、以下のような記述があったのでそのまま紹介したい。

8月23日頃(全滅の2週間前)になると守備隊内の弾薬や食糧はほとんど尽き、脚気、アメーバ赤痢患者が続出し、ほとんどの将兵が体力を消耗し歩行すら困難な状況となった。(中略)
拉孟陣地の「玉砕」が刻一刻と迫っていた8月下旬、朴永心ら朝鮮人「慰安婦」たちについて早見上等兵は次のように語っている。
「このとき、本当に頭の下がることがあってね。砲弾と雨のなかをくぐりぬけながら、あの女の人たちは握り飯を兵隊たちに運んでくれたんよ」

私も感動し、頭が下がりました。

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