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2015年4月10日 (金)

【映画】パリよ、永遠に

Paris
フォルカー・シュレンドルフ監督、第二次大戦末期のパリで街を巡る攻防を描くドラマ

【ストーリー】
第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツ占領下のフランス。
この日、エッフェル塔も、オペラ座も、ノートルダム大聖堂も・・・パリの象徴でもあり、世界に誇る美しき建造物はすべて、爆破される運命にあった。アドルフ・ヒトラーによる「パリ壊滅作戦」が今まさに実行されようとしていたのである。かつてパリを訪れたヒトラーは、一瞬にしてこの街の美しさの虜となった。戦時下のベルリンが廃墟と化した今、パリの美しさが許せない。ドイツの敗北は時間の問題だったが、ヒトラーは嫉妬ゆえに破壊を命じたのだ。しかし、最後の最後で、パリは生き残った。 そこには、パリを守るために一世一代の「駆け引き」に出た一人の男の存在があった。

【作品データ】
原題 Diplomatie
上映時間 83分
映画公式サイトへ

【スタッフ】
監督・脚本:フォルカー・シュレンドルフ
原案・脚本:シリル・ジェリー
撮影監督:ミシェル・アマテュー
セットデザイン:ジャック・ルークセル

【キャスト】
総領事ラウル・ノルドリンク:アンドレ・デュソリエ
ディートリヒ・フォン・コルティッツ将軍:ニエル・アレストリュプ

【感想】
場面がホテルの一室(といってもドイツ軍司令部の司令官の部屋)がほとんどで、まるで舞台劇のようだと思って見ていたら、そのとおりだった。
原題は「外交」「駆け引き」という意味で、その名の通りのストーリー展開でした。
歴史的背景をそれなりに知っている私にとって、この話は少し出来すぎな気がしますが、単純に心理的な駆け引きが楽しめます。
理不尽な上司の指示に対し、どう対処すべきかという現代に通じる構図を思うと、ドイツの将軍の苦悩はサラリーマンにも十分共感できるでしょう。
最後に、あれ?嘘だったの?というのはフランスならではのエスプリなんでしょうが、生真面目で義に篤い武士道精神を敬う日本人にはちょっと感情的に付いていけない終わり方(詐欺的な手法)にニヤリとはできませんでしたね。(フランス人ならブラボー!でしょうが(笑))

【追想】
 歴史好き、戦史好きの私は、第二次世界大戦末期にヒトラーが占領していたパリを放棄するにあたり破壊命令を出したが、ドイツ軍のパリ防衛司令官はその総統命令を実行せず、ほとんど無傷のまま連合軍に明け渡されたことを知っている。
 その経緯を私は詳しくは知らなかったが、私の認識では、コルティッツ将軍は芸術文化を愛する典型的なドイツ軍人ゆえに、ヒトラー総統のパリ破壊命令を実行しなかったと思っていた。

 このあたりは日本人にはよく分かっていないと思うが、簡単に解説すればナチス党とドイツ軍は第1次世界大戦後の敗戦国としてドイツの屈辱的な国際的地位を打破するため、双方が結託し、軍備増強・領土拡大にまい進し、第二次世界大戦に突き進んでいったのが歴史的事実である。
 しかしながら、ヒトラーを中心とするナチス党と伝統的に貴族階級出身者が多かったドイツ軍はその存在基盤・身分階層・文化思想的にナチスとは相いれない、むしろ対立しやすい組織同士であった。それでも、第二次世界大戦を戦っていたわけで、ゆえにパリ陥落の一か月前の1944年7月には実際にヒトラー暗殺未遂事件も起きているのもそうした背景があるからである。
 また、ドイツ軍の将軍将校がヒトラーを嫌う理由として、ヒトラーが庶民出身であるとともに、軍での階級が伍長(現代のサラリーマンでいえば平社員より少し上の主任レベル)という自分たちよりかなり低い階級だったため、一言でいえば馬鹿にしていた実情もあったのだ。
 さらに、連合軍のノルマンディ上陸後のフランスでは前線にしか兵力を配置できず、弾薬も欠乏する中、パリを守ることも、破壊することもそもそもできない状態であったと思われる。
 日本と違いに、当時のドイツ軍人のうち、ナチス党員やナチス親衛隊を除けば、国のためという思いはあっても、狂信的なはヒトラーに殉じようとは思っていなかったと思われる。

 そういう背景を知って本作品を見ていると、本作品でのそれぞれの苦悩が少し違って見えてしまうのであるが、この映画の主人公二人が歴史上接触し、それがどの程度、パリの無血開城に影響を与えたかはともかく、少なからず影響を与えたことは歴史的事実であり、素直に一つの解釈として受け入れたいとも思った。

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