【書評】戦後レジームを解き放て! 和田宗政/著
いつものように反対の意見の著作も読むというのが私の読書姿勢である。
本著は先に書評した「永続敗戦論」とは相対する考え方の著作である。
まず著者であるが現役の参議院議員である。しかも出身はNHKアナウンサーでありながら「みんなの党」(すでに廃党)所属という異例の略歴である。
副題は「日本精神を取り戻す」となっており、バリバリの保守、どちらかといえば右翼といって良い主張が盛り込まれている。
戦後レジームとは何か。日本人に脈々と受け継がれてきた日本精神を縛り付ける戦後の諸制度と私は解しています。(中略)
政府答弁的には、戦後の憲法を頂点とした、行政システム、教育、外交・安全保障などの基本的枠組みのことを言います。(中略)
GHQ()はその占領政策において、我が民族のDNAに刻み込まれた日本精神をはじめとする日本人の強さを弱体化させようと試みたことは各種の資料からも明らかです。そのGHQが仕掛けた罠は、今の日本にボディブローのように効いており、知らず知らずのうちに日本人の考え方はGHQが誘導しようとした方向に向いており、世代を超えた負の連鎖が起きています。(中略)
今こそ、こうした戦後レジームを解き放ち、誇りある凛然とした日本国と日本人の姿を取り戻す時です。(中略)
戦後レジームとは強大なものですが、一緒にとことん考え、その呪縛を解き放ち、我が国の将来のためにともに行動していきましょう。
来年は戦後70年です。いつまでも日本人が呪縛にとらわれていては、我が国の繁栄はありません。憲法改正の機運は高まり、慰安婦の強制連行に対するねつ造が発覚し、事実に基づいた歴史教育の見直しも進んでいます。今こそ、行動の時。決意をもってこの本を著します。
平成26年秋 参議院議員 和田政宗 (本著のはじめにからの引用)
戦後レジームからの脱却という目的は同じながら、本著では中国や韓国のいうところの歴史認識問題を中央突破しようする方法での脱却、片や永続敗戦論は真逆に戦争の総括から行うべきだとの論で、私の頭の中はごちゃごちゃになったところである。
どちらの主張にも一理あるのであるが、未来志向という意味では、もはや70年前の検証は不可能であるし、生産性がない作業であると思わざるを得ない。
過去を消すのではなく、凍結したまま、少しずつ解凍していくというのが現実的な気がするのである。
一方、憲法改正については、改正論者であるのであるが、それでも危惧がないと言えば、嘘になる。
なぜなら、小泉時代の熱狂から、民主党への政権移譲、さらには安倍政権への熱狂とこの国の有権者の節操のなさは驚きを隠せない幼稚さがあるのだ。
「誤りを正すに憚ることなかれ」で生きている私とて、彼らが信じられないのである。そもそも民主主義の愚鈍的硬直性が嫌いだし(笑)
まあ、左翼の方のいう護憲というのがあまりに前時代的ながら、相当の信任を得てきた時代からみれば、議論が始まった現代は良い方向だと思うのであるが、心配な面もある。
いずれにせよ、変化に対応できなければ日本も危ういことは確かな以上、140年前の明治維新と70年前のポツダム宣言受諾という二度の苦難を乗り切った日本人の英知に期待したい。だって、70年周期だとそろそろ制度疲労する頃ですからね。歴史は繰り返すものだから。
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