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2015年2月 5日 (木)

【書評】コーランを知っていますか 阿刀田高/著

Koran
 イスラム教の聖典「コーラン」に関する書籍でわかりやすいと言われている本を読んでみた。
 ムハンマドの生き様、当時の状況からアッラーの啓示を読み解くあたりは世界各国の聖典や神話をわかりやすく読み解いてきた著者ならではの解析である。

 コーラン(クルアーン)は、マホメット(ムハンマド)が西暦610年頃から死ぬまでの約22年の間に、神(アッラー)の啓示を何百回も受けて、それをそのままアラビア語として語り、多くの書記によって記録され、死後にまとめられたものである。
 現在の形は全てで114章からなる。「クルアーン」という名称はアラビア語で「詠唱すべきもの」を意味し、アラビア語では正確には定冠詞を伴って「アル=クルアーン」と呼ばれる。
(日本では英単語の発音のコーランが定着している。)

 以下、本著からコーランの日本語訳と著述を引用していくことにする。

第1章<開端章(アル・ファーティハ)>マッカ啓示 7節
1.慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
2.万有の主、アッラーにこそ凡ての称讃あれ、
3.慈悲あまねく慈愛深き御方、
4.最後の審きの日の主宰者に。
5.わたしたちはあなたにのみ崇め仕え、あなたにのみ御助けを請い願う。
6.わたしたちを正しい道に導きたまえ、
7.あなたが御恵みを下された人々の道に、あなたの怒りを受けし者、また踏み迷える人々の道ではなく。

 第一章は七節と短いながらコーランの本質を告げている。膨大なコーランのエッセンスが、ここに明示されている。
 第一節の「慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において」はコーランの決まり文句で、各章の第一行目はほとんど全てこれで始まる。
 アッラーを称えているのは当然として、そのアッラーは「万有の主」つまり時間空間を超えた全世界の主なのだ。
 一節一節にこの神の属性がきっかりしたためられている。
 一に全世界の支配者にして唯一の支配者であること、二に最後の審判という総決算が実在すること、そして三にアッラーがその主宰者であることを明言している。

 コーランは神の言葉を記したものである。人間ムハンマドの言葉ではない。アッラーの啓示がムハンマドに宿り、それが彼の口から発せられて、後に記録されたものである。それゆえに人間が考えた哲学ではなく、神自身の言葉なのだ。

第2章<雌牛章>(35節から37節)
35.われは言った。「アーダムよ、あなたとあなたの妻とはこの園に住み、何処でも望む所で、思う存分食べなさい。だが、この木に近付いてはならない。不義を働く者となるであろうから。」
36.ところが悪魔〔シャイターン〕は、2人を躓かせ、かれらが置かれていた(幸福な)場所から離れさせた。われは、「あなたがたは落ちて行け。あなたがたは、互いに敵である。地上には、あなたがたのために住まいと、仮初の生活の生計があろう。」と言った。
37.その後、アーダムは、主から御言葉を授かり、主はかれの悔悟を許された。本当にかれは、寛大に許される慈悲深い御方であられる。
(47節から52節)
47.イスラエルの子孫たちよ、われがあなたがたに与えた恩恵と、(わが啓示を)万民に先んじ(て下し)たことを念い起せ。
48.そして誰も外の者のために身代りになれない日のために、またどんな執り成しも許されず、償いも受け入れられず、また誰一人助けることの出来ない(日のために)その身を守りなさい。
49.そしてわれがあなたがたをフィルアウンの一族から救った時を思い起せ。かれらはあなたがたを重い刑に服させ、あなたがたの男児を殺し、女児を生かして置いた。それはあなたがたの主からの厳しい試練であった。
50.またわれがあなたがたのために海を分けて、あなたがたを救い、あなたがたが見ている前で、フィルアウンの一族を溺れさせた時のことを思い起せ。
51.また、われが40夜にわたり、ムーサーと約束を結んだ時のこと。その時あなたがたはかれのいない間に仔牛を神として拝し、不義を行った。
52.それでも、その後われはあなたがたを許した。必ずあなたがたは感謝するであろう。

 いずれも旧約聖書の話で、前半は「アダムとイブの話(創世記)」、後半は「モーセ(ムーサ―)の話(出エジプト記)」である。
 コーランは、ムハンマドが「われこそが最後の、そしてもっとも卓越した預言者。神の言葉はここにおいて完成される」と宣言した。その教えがイスラム教であることは言うまでもない。
 ユダヤ教もキリスト教も同じ唯一神(ヤーヴェ)を仰ぎ、これまでにも神の言葉を伝える啓典(ユダヤ教の聖典や旧・新約聖書)がくだされ、数多くの預言者(モーセやイエス)がこの世に送られてきたが、人々の胸にまだ充分に神の教えが届いたとは言えない。いよいよ最後にムハンマドが現れ、もっとも充実した教典であるコーランがつかわされた、と、これがイスラム教側の見方である。
 コーランはユダヤ教の聖典や旧・新約聖書の記述から強く影響を受けていると思われる部分が随所にあるけれど、イスラム教の立場としては、
「そりゃ、同じ神様の教えなんだから、似ていて当然だよな」である。

 コーランは昔の出来事について旧約聖書などの記述をふまえ、それを利用して述べている、と見えるけれど、ムハンマドの立場で言えば、
「とんでもない。それはぜんぜんちがう。旧約聖書にどう書いてあっても、本当のところはコーランに書いてあるほうが正しい。アッラーはすべてお見通しで、一番正しいことを私に啓示されたのだから」

 コーランに先立つ二つの聖典、旧約聖書と新約聖書について、私見を述べれば、旧約聖書は古代ユダヤ王国の建国史として読むことができる。新約聖書はイエス・キリストの伝記として読むことができる。(中略)
 じゃあ、コーランはどうだろう。
 コーランの記述は、なにに似ているだろうか。歴史ではない。伝記でもない。もちろん論文でもない。
 あえて言えば・・・素直な感想を述べれば、

 親父の説教に似ているなあ
 
 まあ、まあ、まあ、内容のことでなく、論述の方法において、である。しかも、これは経験豊富で、知識も広い、偉い、偉い親父の場合である。そこいらへんにいるただの親父に似ていると言うのではない。なにしろ相手は神なのだから・・・。(中略)

 だが、そういう偉い親父でも、説教というのはあまり論理的でない。いきなりドカンと降って来る。事実の誤認もあるし牽強付会もある。断片的な言いようが多いから前後の事情を知らないとわかりにくい。(中略)
 そして、もっとも顕著な特色は、親父の説教は、つねに、くどい。同じことを何度も言う。何度言われてもばか息子はわからないから、親父のほうもついつい何度も言ってしまうのだろうけれど、とにかく、くどくて(中略)

 どんなに偉い親父でも、アッラーの神を親父に比定しては不敬の謗りをまぬかれまいけれど、お許しあれ、コーランに散見されるくり返しは頑固おやじを彷彿させる。読み進めながら親父の説教をふと思い出さずにはいられない。何度くり返し言われても、それに従わない愚かさに思いを馳せてしまう。

【ひと言】
 第2章までの一部をまとめて、これだけの内容です。(笑)
 太字は言いえて妙です。
 まず、常に「慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において」と唱えさせられ、その気になる。
 神の言葉なので、批評なぞとんでもなく、絶対の存在であると自ら言っている。
 話の意味は崇高な話もあるが、実に小さな、神様がそんなことを気にするのかと言うような、あるいはなんだか言い訳のような話の方が多い。そういう細かい話がイスラムの戒律になっている。
 とにかく男性らしい力強い神様らしく、高圧的な言い様で、論理を超えたちょっと意味不明で難解な話で繰り広げられる。なんだか、理解できない自分は当然神より劣っているのだと感じさせるのを狙っているかのようだ。
 さらに一神教の先輩宗教であるユダヤ教やキリスト教の啓示を踏襲している点で、唯一神の啓示として、最終最高のものと自らが位置付け、さらには最後の啓示としているのは、最高の宗教としてライバルを寄せ付けない見事な戦略だと思う。
 ただ、日本では信者は増えないと思いましたね。一神教の伝統が無いのに「我は全知全能の神なり、信じよ」って毎回唱えさせられるのは、日本人の性には合わないと思いました。(笑)

追記
イスラム国人質事件を平和な日本で考えてみる
イスラム国の後藤さん殺害動画メッセージ全文(日本語訳)
イスラム国によるパイロット殺害方法は最悪でヨルダンは報復必至か?
イスラム国の簡単解説(イスラム教、コーラン、過激派(原理主義者)、ジハード(聖戦)含む)

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