【書評】世界から嫌われる中国と韓国 感謝される日本 宮崎正弘/著
著書は中国語が堪能なベテランジャーナリスト。
中国・韓国はもちろん、東南アジア、つまりアセアン各国も長年取材されているようで、本著を書き下ろすため、最近、現地で丹念な取材を経て、本著を上梓されたようだ。
タイトルは今流行りの嫌中嫌韓本ぽいのが、実にいただけないのであるが、内容については、いわゆる数字などの客観データはないが、現地でしっかり取材されていて、信頼感あふれる納得の内容である。
感謝される日本と書いてあるが、実際には人畜無害の日本人というのが現地の捉え方である。
一方、中国は、世界各地に中華街を作っているように、圧倒的な人口と伝統的に商魂たくましい民族であるため、中国と近隣国である東南アジアでは、長年の移住の結果、華僑としてその国の経済と政治の実権をすでに握っているということを、日本人は実感としてしっかり認識していないことを痛烈に感じた。
南シナ海の領土問題で鋭く対立しているベトナムやフィリピンであるが、いずれも華僑の力が強く、特にフィリピンの現政権は華僑出身でありながら、現在の中国とは政治的にどうしても譲れない事態に陥っているというのが、いかに異常な事態であるかということを如実に表している。
かつて読んだ「不愉快な真実」において、自らのなわばりを侵すものを攻撃して排除するという生物の本能をいまなお潜在的に持っている生物たる人間の集団である国家・民族もその呪縛から逃れられず、領土問題はいかなる民族・国家とも妥協することが出来ない。(日本だって左翼思想の社会党や日本共産党ですら竹島・尖閣諸島は日本固有の領土と言っている)
つまり、現地の華僑と今の中国資本が現地の経済活動ではぶつかっていて、それが嫌われていると言うことであり、人畜無害の日本への好感はあるものの、現地で経済活動をあまりしない、つまり金を落とさない日本に対しては、不満や親近感の欠如があるというのが、東南アジア各国の総じた捉え方ということのようだ。
韓国はサムスンやLG電子と言ったスマホや家電の人気、さらには韓国ドラマ、K-POPなどのいわゆる韓流ブームによる親近感や憧れは総じて上がってきているが、現地での韓国人による差別的対応などの悪評はつきない、とくにフィリピン、ベトナムでは顕著のようである。
いずれにせよ、歴史的地勢的に加え経済的にも巨大中国の東南アジアへの影響力は想像する以上に強大だということである。嫌われるのもその強大さゆえであるということがよくわかった。
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