【書評】計画と無計画のあいだ 三島邦弘/著
サブタイトルは『「自由が丘のおがらかな出版社」の話』となっている。
著者は小さな出版社の社長さんである。小さな出版社と言ったのは、社員8人だからであるが、このミシマ社の出している本は、すべてがヒットしている恐ろしい出版社である。
内容は、起業と起業後の著者とそのお仲間の歩みがとてもユーモラスなエピソードと文章で綴られていて、とても面白い。
こんな人達が作る本を読みたいと心の底から思った。
ミシマ社の本はきっとお奨めです。
以下、本エッセイのエッセンスが凝縮している第11章「計画と無計画のあいだ」から引用する。
もともと人生なんて初めての連続ではないのか。
本来、初めてのことに対応するとき、頼りになるのは自分の感覚しかないだろう。
初めて降り立った外国の地で、目には見えないところにあるはずの、最適な宿を見つけられるか。財布面でも安全面でも適切な宿を見つけられるか。それは情報収集力ではなく、感覚勝負といえる。
つまり、無計画線を支えるのは、感覚なのだ。感覚が無計画の線を遠くまで延ばしてくれる。
計画線のない状態。
これは、糸の切れた凧みたいなもので、風に乗ってどこまででも飛んでいくかもしれないが、逆に、どこにとんでいくかもわからない。戻ってくる場所もない。つまるところ、コントロール不能。それは自由とはいわない。たんなる暴走だ。
暴走は、誰も幸せにはしない。もちろん自分自身も。
人が自由を感じながら生きるということも、この凧揚げの例とそれほど離れていないだろう。
「計画と無計画のあいだ」を揺れ動いているとき、人は初めて自由を感じうる。そして揺れ動く二つの間隔が広ければ広いほど、自由度は高い。
これが、この五年間をふりかえる最中に得ることのできた、ぼくなりの発見だ。
この発見以降、分からないことだらけだった自分のこと、会社のこと、社会と自身のかかわり、といったことが、少しだけわかった気になれた。
後悔や失敗、不況や時代や環境も、ぜんぶ計画線の内側に入れてしまえばいい。
そして、その分、無計画線を延ばしてやるのだ。数字では絶対に測りえない無計画線を。
間違いなく、それは世界の広がりをもたらすし、きっとそれだけが本質的な意味での世界の広がりをもたらす。
計画と無計画のあいだで揺れ動くことを恐れず、行動し続ける人たちのもとへ。毎日のように、やわらかな温かみを引き連れて。
【ひと言】
最初のサラリーマン時代は若かったこともあり起業したいと不肖の私は思っていた。それでも最後はきっちりボーナスを貰って退職し、ニュージランドに旅立って、3ヶ月滞在した経験がある。
一方、この著者は起業は無理だと思いながら、ボーナスが出る1ヶ月前に突如会社を辞めて、世界に旅立った。
その後は、自分の作りたいと思った本を作るため、出版社を立ち上げて、かなりユニークで面白い社員たちと全力で本を作っている。
計画、計画に縛られる訳でなく、無計画ではあるが先の見えない暴走ではなく、自由に全力に進んでいく。
他者への影響力は著者と異なり皆無だが、私も計画と無計画のあいだに、ただ夢を追って生きている気がした。(笑)
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