【書評】結婚 橋本治/著
書き出しから衝撃的な小説だった。
●まだ春が春のままで留まっているような頃だった。古屋倫子は会社帰りに寄った店で、同僚の大橋花蓮に「卵子老化って知ってる?」と言った。
「男子?廊下?」・・・・・
28歳の主人公倫子は兄が結婚し、同僚も結婚することになって、過去の自分の恋愛体験を反芻しつつ、婚活をはじめ、自分の結婚相手を探していくことになる。
両親と兄家族(妻子)と鴨川に家族旅行に行っていろいろな葛藤が起きるところや倫子が一人暮らしの部屋で、あーだこーだと悶々と考えているのが、私にはとてもリアルに感じられた。以下、印象的な文章を引用する。
●倫子は、女が陥りがちな誤った結婚観に片足を突っ込んでいた。それは、「私なら彼が理解出来る。彼を支えられる」という過信である。(中略)
人から「結婚というのは、男のために女が尽くすものだ」と言われれば、「バカじゃないの!何言ってんの!」と反発するくせに、一人になればうっかりと、「私には出来るけどな、ふふふ」という考えをしてしまう。
●でも倫子は、もう若い女のするような「付き合う」が出来なくなって、したいとも思わなくなっていた。ただそれだけの話だが、「もう若くない」ということは女にとって一番認めにくい事柄なので、仕方がないと言えば仕方がない。
●「あなたがどうすれば結婚できるかって聞くから言うけど、結婚て、まず若い時に愛されるのね。それで妊娠すると、気の弱い男は”結婚しよう”って言うのね。気の弱い男は、妊娠した女より、妊娠する前の女の方が好きなのね。でも気の弱い男はそんなことに気がつかないから、すぐにまた愛する女を妊娠させるのね。自分でやっておいて、その結果が気に入らないから、気の弱い男はだだをこね始めるのね。そうして、結婚生活は終るの。私の知る結婚生活はそれだけだから、あなたのお役に立てるかどうかは分からないけど、結婚をしたかったら、若い内に男に愛されることね。」(職場のお局様的存在のシングルマザー岩子さんの答え)
著者は男性なのだが、男性は何も考えていないような男の方が結婚していて、そんな一人の私にとって、女性がいろいろと考えていることには全く思いも巡らせられずに生きているということに、50近くになって気がつかせられた。
まあ、気がついたのであるが、私の鈍感さは治ることは無いだろう。
結婚して幸せになれるのか?と言う疑問は、クラス替えで友だちできるかなあ?就職のときに、自分は人並みに仕事が出来るのだろうか?と無用に悩んでいるようなものだということだ。
結婚するのは勢いだと思う。では結婚を続けるのは何か?は自分にはよくわからない。
鈍感でよくわからないというのが実はその答えなのではないか?と本著を読んで思った。
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