【書評】高齢初犯 NNNドキュメント取材班
副題は「あなたが突然、犯罪者になる日」
公私とも高齢者と身近に接しているので、高齢者の行動傾向を実体験として、持っているが、犯罪者との接点はない。
それでも高齢者の犯罪の報道が増えており、なぜそうしたことが起きているのか?それは公私とも気になるところであり、読んだ次第である。
以下、印象に残った部分を引用する。
●ひとり暮らしでも社会とのかかわりがある人は、まずやりません。社会とのかかわりが切れてしまい、何もやることがない高齢者が万引きに走る傾向があります。(第2章 高齢者はなぜ犯罪に走ってしまうのかの一節)
●人は、人とのかかわりがあるからさびしさを感じるもの。地域とのかかわりがあるから疎外感を感じ、社会や行政とのかかわりからさびしさを感じるものだろう。
もし、彼ら自身が孤立しているとかんじていないとしたら、それを感じないほど全ての関わりが絶たれていたということになる。(第4章 日本だけが、なぜこんなことになっているのかの一節)
●名前を呼び合う社会で生きていたら、人は人格や誇りを持ち続けることができるような気がする。(中略)
普段から大事にされている実感があり、誰かから当てにされていると思えれば犯罪に走ることもないだろう。何らかの役割があり、誰かの役に立っていると感じられれば、不安が充満し爆発することもないかもしれない。(第5章の犯行の瞬間より、そこに至ったプロセスの一節)
【ひと言】
取材班の目の付け所はよいと思うし、常々、私が思っていたことが補強された。
なので、取材班には、ぜひとも事前にこちらを読んでおいて欲しかった。
→ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす 佐藤眞一/著
この本が正しいのかどうかはよくわからないが、この本に書かれている高齢者には高齢者ならではの行動原理が本著で明らかとなった高齢者の犯罪傾向そのものに当てはまっているからだ。
なお、本著で最も印象深かったのは以下のくだりだ。
●この仕事(ストーカー相談)をはじめて15年間、一度も農業を生業としているストーカーに会ったことがないんです。(第1章 高齢初犯はなぜ増えているのかの一節)
機能的な都市で効率的に生活することに慣れた者は、理屈で納得できないものに、不満が増殖してしまい、抑えられなくなる場合があるうということなのか?
自然や生き物を相手にしていれば、こちらの思いや理屈なんて、ちっぽけなものだと自覚するからストーカー行為なんてしないのだろう。
私はまだ高齢者の年齢ではないが、最近、面倒くさいと思うことが増えてきており、また逆に衝動的な行動をおさえていることが多い気もしている。
今なお自分は怠惰でないと思っているが、油断せず気をつけて生きて行きたい。
追記:
本著では何人もの犯罪を犯した高齢者にインタビューしているが、取材班は特に解析していなかったが、私が気になったのは、次の二点である。
ひとつは、家族との関係が希薄で、孫の話をする高齢者がいなかったこと。そもそも孫がいないのか、あるいは孫との関係が薄いのかは私には判らないが、孫が居れば、高齢者の生き様を見せなければならないという使命感が生まれるが、無いとそれが希薄となる場合が生じることが要因の一つなのではないか?
もう一つは、信心深さがないように見えた。信心深いことが良いことかどうか判らないし、実は私も信心が無いのだが、信仰心や信心深さが無いということは、自分を信じすぎているということでもあるのではないか。そして自分を信じすぎれば、自分の暴走を止められないのではないか?
以上の2つが実のところ気になった。実際のところ、どうなんだろうか?
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