【書評】偶然の装丁家 矢萩多聞/著
装丁家とは「本のデザイナー」と著者は自己紹介のときに簡単に説明しているらしい。
確かに装丁とは本の外観の話であり、著者に比べれば、ほとんど裏方といっていい職業である。
ためしに自分の書棚をあさってみたが、本の装丁を誰がしたかが書かれていた本はなかった。
(本著にはきちんと装丁家として著者の名前が書かれていたが(笑))
著者は中学一年生で不登校になり、その後はインドと日本で半年毎に行き来し、画家として生活し、やがて装丁家となった異色の人であり、本著はその自叙伝的な本である。(自叙伝といっても著者はまだ30代である。)
副題は「就職しないで生きるには」であり、著者の生き様はまさにそれを体現しているのであるが、それこそが異才であると、平凡なサラリーマンである私は思ってしまうのだが、著者はそう思っていないのである。
「特別な何かになろうとしなくていい。個性的に生きようとする必要はない。才能なんてものは存在せず、あるとしたら人の出会いと運だけ。ぼくなんてそうやって生きてきたんだから、楽にいこうよ。」
こういう謙虚な生き方って、とっても素敵だなと思うのであるが、私にはできないだろうという思いをどうしても払拭できないのだが、著者はきっと「そんなことはないですよ」と言ってくれそうな、とても勇気を与えてくれる本なのである。
そして本著は本に関わる仕事をされている話なので、多くの本の話しが出てきて、すでに何冊か図書館でネット予約してしまっている。
今を一生懸命に生きる。そういう生き様の延長に自分の未来があるということ。
最近漫然と生きてしまっている私も年末に少し反省するとともに、明るい未来を感じさせてくれる一冊になりました。
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