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2014年8月23日 (土)

【書評】お星さまのレール 小林千登勢/著・原作

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本作品は女優の小林千登勢さんが幼少期に体験した終戦時の朝鮮からの決死の脱出行のお話である。
写真左は、小林さん本人による著作で、右は、それを原作として製作された長編アニメーション映画を絵本化したものである。

実は、両作品はそのテイストが大いに異なる内容となっていて、ネット上では、改変であるとか、捏造とかでそれなりに物議を醸し出しているところでもあり、知った以上確かめるべく、せっかくなので両作品を一気に読了した次第である。

あらすじは、幼き小林さんが家族で今の北朝鮮で生活していた中、終戦を迎え、そのうちソ連軍が北朝鮮に進駐し、小林家家族を含む残された日本人を取り巻く情勢は悪化の一途となる。
日本人への迫害が酷くなる一方、ソ連の悪意ある不作為で何もできないまま終戦1年が経過し、小林さんの父をリーダーに、日本人集団による南朝鮮への決死の脱出行が始まる。道中、朝鮮人に何度も騙され、危機に陥るも、最後の最後に義に篤い朝鮮人の決死の案内で、北緯38度線を無事に越え、日本に帰国したという話である。

小林さんは1937年生まれ、終戦の1945年にはわずか8歳。彼女は確かに辛い経験をしたが、それは見る目の偏った、しかも大人に守られた限られた経験であったことは想像に難くない。

まず、原作の方であるが、小林さんが本当に自分の思いと経験のまま書いたようである。
それは、以下のようなくだりからも明白であろう。

1 「ねえ、お母さん、どうして朝鮮の人は目が細いの。なぜわたしの目が大きいの?」
  とたずねました。すると母は、
  「朝鮮の人はね、目が細いの人が美人なのよ。」

2 ソ連軍は、銃やピストルを持って日本人の家におしかけて、手あたりしだいに物をうばったり、若い女性をつれ去ったりするというのです。(中略)警察官のかわりの朝鮮人と、大きなソ連兵ふたりが来て、「この家は、われわれが接収する。あすの朝九時までに出ていきなさい」(中略)ダッ、ダダーン!ダッ、ダダーンーー!ソ連兵がピストルを玄関の外に向けてうったということがわかりました。

3 やがて、行列をおきざりにして、強盗の波が去りました。気がつくと、案内人の朝鮮人たちもいっしょに消えていました。
  「ちくしょう?ぐるだったんだな」
  そういう、おとなたちの声がしました。(その後、もう一度、別の朝鮮人の案内人に騙される。)

4 38度線間近まで案内してくれた朝鮮人の案内人に向かって、父がいいました。
  「ありがとうございます。あなたがいなかったら、わたしたちは、ここまでこられなかったでしょう。」
  すると、案内人もいいました。
  「よろこんでもらえて、わたしもうれしいです。みなさんに、朝鮮の悪い思い出だけをもって日本に帰られたのでは、残念ですからね。」

5 帰国船の中の演芸大会で、当時9歳の小林さんは、「赤とんぼ」を歌い、優勝したエピソードが語られている。

 正直、終戦と植民地解放の混乱で、北朝鮮に残った日本人居留民が辛苦を味わったのは知っていたし、そんな中、朝鮮の人達が日本に対して恨みを晴らすような行為が多々あったとしても、それでも朝鮮の人の中にも、日本人を助けてくれる人もいたし、私はこの原作本のそうしたシーン、特に最後の脱出シーンにいたく感動した。

 一方、アニメ版の本であるが、実に話が良くまとまっている。余計なエピソードは削られ、朝鮮の植民地についてのエピソードが追加されていた。大人目線も入ったまとまりがあり、しかもわかりやすいストーリーになっている。

●追加された主なエピソード・セリフ
1 創氏改姓(戸籍制度と日本人氏名の使用)に基づき、朝鮮の名前「龍一(ヨンイル)」を使う少年を日本人中学生たちがいじめていたのを、幼き小林さんが助け、名前を奪われる辛さを感じるシーン。

2 「もともと朝鮮は、日本のものではなかったんだ。自分の国を愛する朝鮮人たちの中には、日本の支配に反対して、たたかおうとする人たちが、たくさんいたんだよ。」

3 わけを知った村人は、とてもしんせつでした。おにぎりをたくさんつくって、くばってくれたりもしました。

▲省略された主なエピソード
1 小林家の元使用人(朝鮮人)が恩を返すべく敗戦後に自宅などを差し押さえられたりした小林家に献身的な支援をしていたこと

2 朝鮮人の案内人に二度騙されたエピソード

3 ソ連兵の横暴

 まあ、アニメ版のほうは、「日本が悪く、朝鮮は虐げられていたから、日本人がひどい目にあうのは当然の報いだ。」みたいな話になっている。なぜ元使用人の支援の話を削ったのかはわからないが、確かに当時、日本に蔓延していた反戦自虐史観の左翼思想を感じるといえば少し感じないでもないが、当時は全くだれも感じなかったのでしょうね。(私はアニメを見ていませんが(笑))
 今は、それがおかしいと感じてしまう自分も居る。
 そんな時代になってしまった。
 いったい歴史の真実はどこにいってしまったのか・・・。

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