【書評】OUT(アウト) 桐野夏生/著
読者が選ぶ桐野作品のダントツのベストワンとされたのが本作品であるということを知って、すでに17年前の作品ではありますが、読みました。
あらすじは、深夜の弁当工場に勤務するパート主婦の4人のうち、一人が突発的に旦那を殺し、ほかの3人が死体をバラバラにして処分する。処分をした主婦のリーダー格は雅子さん。
無計画で直情的、無知で無警戒な主婦たちの稚拙な犯罪だったものが、この雅子のおかげで、警察を翻弄させ、完全犯罪と化していく過程は、なぜだかわくわくすらさせる。そして完全犯罪と化した死体のバラバラ作業がビジネスにまでなる。しかしながら、この完全犯罪化の過程で、手ひどい被害を受けた元暴力団で実業家になっていた佐竹がこれまで築いたもののほとんどを失う。復讐に立ち上がった佐竹により、主婦たちは殺されたり、財産をすべて失ったりとし、最後には、リーダー格と認め、自分を認めるであろう雅子にもその毒牙で襲ってくる。文庫上下巻800ページの長編ながら、多彩で先を読ませない見事な展開のストーリーと、どこにでもいるような主婦の話を、荒唐無稽ながら身近に感じる話として、一気に読み進めてしまった。
さすがベストといわれる作品であった。
17年前には、ネットやメールがまだ一般的でなく、携帯すら存在していない世界でありながら、これほどまでも違和感なく読み進められる、見事な世界観に感心した。
名作とは、時間を感じさせないものだと改めて思った。
追記:映画化したら面白いのではと思ったら、すでに映画化されていました。
Webサイト見ただけですが、キャスティングはいただけないし、ストーリーもだいぶ変わっているようですね。
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