【書評】光線 村田喜代子/著
「この先、原発がなくなったら、放射線治療もできなくなるんじゃないかって、(中略)」
「私のガンが見つかったのは3・11の明くる日でした。もう日本中がどんどん放射能に震え上がっていった頃です。大きな鬼が暴れまくっているときに、日本中がその鬼を憎んで罵って石を投げているときに、車一台買えるくらいのお金を持って、その鬼の毒を買いに行ったようで、何とも言えない気分だったの」
「そうですねえ。その後ろめたさっていうか。(中略)」
「だから私たちガンが消えても、あんまり大きな声でバンザイって叫べませんものね」
(原始海岸からの引用)
定位放射線治療によりガンが完治した主人公らの会話であるのだが、放射線は極めて有用なことを知った。そういえば、血液も放射線を照射して、安全性を高めていたなあ。
地の霊力をモチーフにした短編集なのだが、連載途中で東日本大震災が起こり、この作家は自身のガンとともにこの大変動を自己の文学に見事に昇華させた小説でした。
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