【書評】不愉快なことには理由がある 橘玲/著
これは名著である。表紙はいただけないが(笑)
冒頭からガツンと殴られる。
「本書では、政治や経済、社会的事件など、私たちのまわりで起きるさまざまな出来事につて日々考えたことを綴っていますが、正しい主張が書かれているわけではありません。」(本著冒頭の引用)
正しい主張でない理由は次のとおり
1 著者は作家であり、問題の専門家でなく素人であること
2 多くの問題ではなにが正しいかわからないこと
3 問題には必ず解があるわけでないこと
そのとおりの論述なのだが、なかなかこうした宣言は出来ないと思う。ゆえに、天邪鬼な私には、むしろ心強い宣言だ。私がいつもそう思って生きているから
そして、この宣言のいう「正しい主張が書かれているわけではない」の趣旨であるが、本著での論述は、
「社会問題は科学(経済原理と遺伝の法則)でほぼ原因が解明できるが、その原因を除去すれば人々や社会全体が幸せを感じるとは限らない」
となっているからだ。
私は単純に科学的思考(歴史と経済原理と遺伝)で原因を推定し、解決の難しさを論じるのみであるが、著者はそれをより論理的かつ分かり易く述べ、解決方法の難しさを多くの人にわかるように論述してあるという点で、名著であると思った次第である。
安易に、人間の努力で乗り越えられないものが厳然としてあることを、こうした作家が言ってくれることに意味があると思う次第だ。
人間社会の答えとしては正しくないかもしれないが、そこに至る理由があるということを認識しての言であり、私は大いに評価したい。
よって引用してお知らせしたい内容あまたあるが、それは後日とさせていただきたい。
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