【書評】鍵のない夢を見る 辻村深月/著
短編小説集で第147回直木賞受賞作。
・仁志野町(にしのちょう)の泥棒
・石蕗(つわぶき)南地区の放火
・美弥谷(みやたに)団地の逃亡者
・芹葉(せりば)大学の夢と殺人
・君本家の誘拐
本編は女性でなければ書きえない小説である。男性では及びもつかない細やかでありながらちょっと異常な女性特有の粘着性のある執着や愚直な感情の発露は読めばそんなものかと理解できるが、私の内側からは決して湧いてこないものであった。
それでいながら、推理小説的な作風によって醸し出される本短編の特徴的な雰囲気は、推理小説をあまり読まない私には、実に新鮮に感じるとともに心地よく読めた。
著者が若さのみならず、現代社会、特にネット社会の出現による新たな社会的な課題、それをまさに同時進行と言えるほどに小説の背景として違和感なく抽出して物語として構成された完全な現代小説であり、それが今の私の感性にはまった感じだった。
どれもお薦めであるが、恋愛と結婚について、普通の人の普通な感覚に極めて近いながらも、それゆえに嵌ってしまう不可思議さを男性の私でも十分に納得できたのは、次の2作であった。
「石蕗(つわぶき)南地区の放火」と「君本家の誘拐」である。
私も若い才能を素直に素晴らしいと思えるような年齢になってしまったようだ。(笑)
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