【書評】空飛ぶ広報室 有川浩/著
航空自衛隊の広報室が舞台の話。有川浩らしい爽やかで優しい文章に厚みのある新刊ですが読書が一気に進む一冊です。
ご承知のとおり、すでにテレビドラマ化されていますが、綾野剛と新垣結衣が主演だったテレビドラマはほとんど見ていなかったので実に楽しめました。(なおテレビドラマのキャスティングは原作のイメージばっちりですね。)
私が好きなストーリーそのものの、喪失からの立ち直りの話なのですが、現代の青春群像とも呼びべき、なりたかった職業からの離脱というプロローグから始まります。
航空自衛隊の広報室に着任した空井は、ブルーインパルスのパイロットに内定した後に、不慮の事故により、パイロット資格を喪失。
東都テレビの新人ディレクター稲葉は、記者失格の烙印でのディレクターへの異動。
そんな二人が、立場は違えども、徐々にお互いの立場や仕事を理解していく様は、実に暖かい眼差しの筆者らしい物語だ。
最後の章は、東日本大震災後に追加されたものであるが、その大震災を経たことによるエピローグは、事実誤認していた私の傲慢な思いをきれいに昇華させてくれたし、個人的にはとても素敵なお話だった。ノンフィクションに思えるほどの素晴らしい小説でしたね。
しかし、これほど主要キャラが多士多彩で、エピソードの多く、しかもテレビ局が舞台とは、まさにテレビドラマのための小説のようでした。(だからすぐにテレビドラマになったのか(笑))
追記:本作品は、航空自衛隊にとって、多くの理解者を一気に増やすことができ、すばらしい広報効果を得られたことでしょうね。
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