【書評】死別の悲しみに向き合う グリーフケアとは何か 坂口幸弘/著
出会いと別れは、人生において、同じ数だけある。死別は少なくて、出会いが増える一方だと思ってきたが、自分の死によって、全ての人と別れるのだから、そうなるしかない。
死別について、事前にこうした本を読むことで、軽減できるとか思っているわけではないが、そうした経験をされた人が、どういうことを気にされているのか。それだけは勉強になった。
節度ある優しさとして、以下のことは戒めたい。
・「してあげる」というあからさまな態度は遺族の自尊心を傷つけかねない。
・「かわいそう」「お気の毒に」という同情の言葉も同様である。
・相手の気持ちを考えずに一方的なアドバイスも「やさしさの押し付け」である。
・「まだ子どもがいるからいいじゃない」「長く苦しむよりもよかったじゃない」も励ましている善意の発言であってもその人個人の心情に必ずしも寄り添っていない場合もある。
以下、本著からの印象的な部分の引用です。
女性への愛でも、愛する者を失った悲しみでも、私が今味わっているような死にいたる病による恐怖、苦痛でもいい。そういった感情にしり込みしていると、つまり、とことんそれとつき合っていこうという考えを持たないと、自分を切り離すことはできない。(P112)
遺族にとっての葬儀のもつ価値としては、非日常的な一連の儀式を通して、死を現実のものとして受け容れる手助けとなることが挙げられる。(中略)葬儀は遺族にとって悲嘆の感情を公にあらわすことが許された社会的な機会であり、民俗的な慣行として葬儀の準備や執行は隣組が担当することによって、遺族は悲しみに身を委ねることができた。(P134)
子どもを亡くした親が「つらいのに毎日食べられるのです。それが私は許せないのです。」同じ経験をした人が「悲しむにも体力がいるのです。食べて寝なければ思い切り悲しむことができない。悲しめない、泣けないというのは本当に苦しいのよ」(P162)
夫と死別してから半年経った女性の言葉
「主人をなくすというのは確かに辛い体験であったが、私でよかった。配偶者をなくすということは初めての経験だったが、私の主人では耐えられない。(私が先に死んで)主人にこの思いをさせるぐらいなら、私が経験してよかった」
« 【書評】不機嫌な夫婦 三砂ちづる/著 | トップページ | 【書評】頑張って生きよう!ご同輩 高齢社会NGO連携協議会/編集 »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【書評】山とマラソンの半生 杉浦和成/著(2022.03.16)
- 【書評】速すぎたランナー 増田晶文/著(2019.03.09)
- 【書評】騙し絵の牙 塩田武士/著(2019.01.20)
- 【書評】嫌われる勇気 岸見一郎・古賀史健/著(2018.12.18)
- 【書評】誤解だらけの人工知能 田中潤・松本健太郎/著(2018.11.16)
« 【書評】不機嫌な夫婦 三砂ちづる/著 | トップページ | 【書評】頑張って生きよう!ご同輩 高齢社会NGO連携協議会/編集 »
コメント