【書評】太陽は動かない 吉田修一/著
現代社会における人間描写にいつもうならさせられる人気作家である吉田修一氏だが、今回の話はこれまでとちょっと趣が違っていた。
ひと言で言うと「日本版007」だ。
ジェームズ・ボンドのように色男で派手な立ち回りはないが、主人公の鷹野は金のために動くとか言いながら、仲間を守り、正々堂々と戦う、大和魂を感じさせる日本男子そのもののであり、彼の仲間たちとの信頼感はクールな言葉と裏腹に熱く篤く、心地よい。さらには好敵手である凄腕の韓国人や国籍不明の美女までもが魅力的でありつつ、彼との関わりが何ともいかしている。
以下、印象的なセリフ
死にたきゃ死ね。(中略)死にたきゃ勝手に飛び降りろ。・・・それができないくせに、何が殺してくれ、だ。・・・笑わせるな。
物事がうまくいかなくなる時ってのは、大抵の場合、内部からの裏切りが発端なんだよ(主人公鷹野の言葉)
予算というのは組まれた瞬間に、最後の一円まで誰の手に渡るかが決まっているのですよ。下請企業まで含めれば相当な数の人間がもう関わって、すでに完全に道筋はできているんのです。(某企業の本部長)
もう少し遠い未来のエネルギーの本命は、未来少年コナンで描かれた宇宙太陽光発電なのかも知れない。実現には人工衛星+マイクロ波伝送技術+レクテナ基地に最高の返還効率の持つ太陽光パネルか・・・。資源のない日本が切り開いていきたいですね。
久しぶりに一気に読んだ。吉田修一氏の作品は、いつもそうだ。忙しい時には止めた方が良いかも(笑)
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» 「太陽は動かない」吉田修一 [粋な提案]
新油田開発利権争いの渦中で起きた射殺事件。AN通信の鷹野一彦は、部下の田岡と共に、その背後関係を探っていた。産業スパイ――目的は、いち早く機密情報を手に入れ高値で売り飛ばすこと。商売敵のデイビッド・キムと、謎の美女AYAKOが暗躍し、ウイグルの反政府組織による爆破計画の噂もあるなか、田岡が何者かに拉致された……。いったい何が起きているのか。陰で糸引く黒幕の正体は?
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