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2012年11月28日 (水)

【書評】癌だましい 山内令南/著

【書評】癌だましい 山内令南/著
読後、普段は気にもしない、つばを飲み込むという無意識の行為に対し、なぜだか神経が研ぎ澄まされてしまうのは、本著の圧倒的な迫力に抗うことができないからであろう。
昨年、がんで叔母を亡くした私にとって、癌は好むと好まざると怖くて身近になった存在でもある。

さて本著は短い2編で構成されている。タイトルは「癌だましい」と「癌ふるい」だ。

「癌だましい」は、食道癌に侵された職場の癌と呼ばれた45歳の主人公(未婚で太った女性)が、もはや食事がのどを通らなく、しかも痛みを感じながらも、なおかつ食べ続け、吐き続けるという生へのあくなき執念を描いている。自らの癌とは向き合わず、そして治療に臨む訳でなく、ただ食べることに固執することのみで、食の楽しみを阻む癌に挑み、敗れ蝕まれていくという無謀な凄まじさに、圧倒されてしまう。

「癌ふるい」は、同じく食道癌の侵された敏腕営業ウーマンであった45歳の主人公(バツ1)が末期癌であることを100人の関係者(知人や顧客など)にメールを送り、その回答メールに点数を付けた、つまり、ふるいをかけたという、かなり変わった形態の小説である。しかしながら、今や慣れ親しんだメールでの短いやりとりが、相手の思いにどれだけ応えられているのかが如実に表れ、現代人の心に強烈にしみ込むであろう作品である。(私のこれからメールの文章により気をつけようと思った。)

最後に著者の略歴が載っている。本職は看護師のようだ。本2作をもって、食道癌で急逝されていた。享年53歳。圧倒的な迫力は、身をもっての体験なのだろう。もはや次作は無く、ただただご冥福をお祈りするほかない。

それにしても、生きるということを実感するには、安定し、安穏とできるところにいては感じられず、むしろ不安であったり、不条理さに押しつぶされそうな厳しい環境に陥ることでしか得られないのかもしれない。

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