【書評】キレイならいいのか ビューティー・バイアス デボラ L・ロード/著 栗原 泉/訳
著者はアメリカのフェミニズム法律学の第一人者だそうだ。もちろん女性である。
本著は容姿にかかる差別をなくすためにはどうすればよいかという、実に壮大稀有な論述である。
容姿による差別は卑しむべき行動規範として、人類はすでに獲得していて、それでも容姿端麗さを個々に求める自由はあって、それで良しというのが、社会の規範となっていると思っていたし、それで十分だと思っていたのだが、このフェミニストさんは、ミスコンや化粧を強要する就業規則等、その根底にある容姿に対する憧れが、差別として醸成されるのだと言うのである。
まあ、確かにそうかもしれないが、ちょっと行き過ぎな気がするのは、理屈としてうまく言えないのだが、あながち間違っていない気がする。
勉強が出来ないことと、太ってしまうことは、病気としてなら仕方ないかもしれないが、自身の怠惰さによる結果であれば、差を付けられても仕方ないのではないか、ということだ。現に仕事の能力差により、差がつけられることは、違法性の存在しないというか、みなが望むところであろう。
それでも、何十年後かに、容姿に係る差別をなくす制度ができたなら、本著はさきがけの著ということになるだろう。
が、現時点で支持されうる理論ではないだろう。(容姿によってまったく得したことのない私ですらそう思う。)
アメリカとは、自然現象に思えるような容姿による差別が制度的に存在しているなら、それすらもなくすべきものとして、その方法を模索するような、司馬遼太郎さんが言っていた人工国家足ろうとする、実に不思議な国なことを改めて認識できた。
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