【書評】放射線医が語る被ばくと発がんの真実 中川恵一/著
現在の日本は放射能汚染に過剰に反応しているというのが私の見識なのであるが、科学的な説明が出来ない以上、これは単なる私の信念として以上の評価は得られない。
本著は、放射線医である東京大学准教授による臨床経験を踏まえた科学的な被ばくの影響を考察し、一般の人向けに解りやすく書かれた本である。(しかも私の知識と同じであった。)
さて、高レベル(100ミリシーベルト以上)の放射線被ばくは、健康被害が生じることは、全ての科学者が認めるところである。
問題は100ミリシーベルト未満である。これに影響があるかないかで意見が分かれている。
著者の意見は、100ミリシーベルト以下では人体への影響はないという立場である。
原理的なことは私には分からないが、以下の事象から本説には論理的な説得力があると思う。
1 自然界で放射線を浴び続けていて、しかも地域差があること
2 広島、長崎、チェルノブイリの被ばく事例からの検証
放射線被ばくに対して、生物たる人間が持つ治癒力がなければ、上記の被ばく事例に対し、発がん性の違いが生じないことは説明できない。影響があったたとしても、人間が本来持つ能力で当然に対応できているということである。
さらに申し述べるなら放射線治療については、誰も異存がないだろうことから、放射線は人類にとって必要な物質であり、技術であろう。使いこなしていくしかない。
著者は最初にこう述べている。
「正確な情報の欠如が問題である」
話が大きくなってしまうが、領土問題を含み、日本人には正確な情報とそれを分析する能力が欠如している気がしてならない。
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