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2012年3月25日 (日)

【書評】ご老人は謎だらけ 老年行動学が解き明かす 佐藤眞一/著

Roujin
「わけがわからないご老人の行動には、理由がある」

うちの父親は後期高齢者となり、母親もそれに近くなったところで、最近ややだらしなさが目立つようになった気(それでも潔癖症から超きれい好きレベルへのダウン程度ですが(笑))がしていましたが、そうした行動までも、本著においては老人行動学として科学的に解き明かされています。

親が老齢期に差し掛かるアラフォー以上の人には是非ご一読することをお奨めする著作です。

以下引用

●なぜ、老い先短いことを気に病まずに暮らせるのか?

老人は外の環境を変えるだけの力が自分に残されていないことを自覚しているために、ネガティブな状況に遭遇すると、無意識のうちに二次的コントロール(現実の世界に合うように自分の内面を変える事)を行います。

老人の記憶の衰えが、良い方に作用するためです。(中略)老人になって記憶力が衰えることを多くの人は恐れますが、記憶力が衰えることは必ずしも悪いことではないのです。

●なぜ、能力が衰えても自信があるのか?

年をとるほどに自己肯定感が強くなったり、自尊心が高くなったりするのは、身体や生活がままならなくなったことによって、ともすれば自己否定に傾きそうになる気持ちを上向けるための、いわば自己防衛機能なのです。「運転をやめた方がよい」と言われることは、自分自身の能力を否定されることであり、これを受け入れることは、自己否定につながるのです。

●なぜ、老人は自分勝手になるのか?

老人はよく人に頼み事をします。(中略)行動には多くの情報処理が伴うため、老人は無意識のうちに自ら行動することが難しいと感じ、他者に頼るのです。老人にしてみれば、能力の衰えをカバーするためにとる自然な行動なのですが、これが若い世代には”自己中心的”と映ってしまいます。限られた能力を有効に使っているだけなのに、「老人は自分勝手だ」と言われてしまうのです。

●長寿者となる人の性格パターンと肉好き傾向

心理学研究では、百寿者(百歳以上の老人)にはある程度共通した性格のあることがわかっています。男性の場合は、わりに几帳面で、自分を曲げない。何時に起きて、何をしてと、日課がほぼ決まっていて、生活がきちんとしている人です。女性の場合は、明るくてわがまま。ちょっと強引だけど周りの人を幸せにしてくれる、いわば”大阪のおばちゃん”みたいな人です。男女いずれにしても、長生きする人はわがままだといってよいでしょう。

肉が好きでタンパク質を十分にとっている人は、体そのもの丈夫で、生きる意欲も高いため、長生きする人が多いと考えられるわけです。事実、調査すると、百寿者のような長生きの人たちは、高カロリーの肉類を好んで食べる傾向が高いのです。

長寿者のパターンを見ると、中年期にはメタボを抑え、老年期にはやせを防止できた人が多いようです。

●なぜ、ガクンと急に弱るのか?

老人は自分が失敗したことによって自信を失うのではなく、他者から失敗の事実を指摘されることで、自信を失うのです。本来持っているポジティブな気持ちが、繰り返しダメ出しをされることでくじかれてしまうわけで、こうなると生きる意欲がガクンと低下します。

●なぜ、老いてナマグサいのか?

老人になると、注意力だけでなく、注意と表裏一体の関係にある抑制能力も衰えるために、いったんやりかけた行為を途中で止めることができにくくなります。たとえば、老人の自動車事故のなかには、ブレーキとアクセルの踏み間違いによるものがかなりあります。(中略)行為を途中で抑制できないために、アクセルを踏み続けてしまうのです。

自分が蓄積してきたものを役立てるとき、老人は「本当に役立つだろうか?」と躊躇したりはしません。自分が役立つのかどうか疑うことは、自分のこれまでの人生を疑うことだからです。(中略)したがって、老人は、ためらうことなく子や孫の、ときには他人の、世話を焼いたり注意したりするのです。

●なぜ、人の世話になりたくないのか?

「社会的な存在になる」とは、社会のいろいろな役割を分担し、自分でできないことは他者の力を借りて生きていくことです。(中略)自立神話から解き放たれ、人に上手に依存できるかどうかが、人生の最終章を幸福に送れるかどうかに関わっているのです。

あなたは、生殖能力がなくなったあと、これほど長く生きるのは人のメスだけだということを、ご存知でしょうか?

●アルトゥール・ルービンシュタイン(ピアニスト)の80歳の時の言葉
「まず、演奏する曲目を減らしました。そして、その少ない曲目を何度も練習しました。さらに、指の速度の低下をカバーするために、テンポに変化をつけました」

●世阿弥の「風姿花伝」の一節
「花には『時分の花』と『まことの花』がある。時分の花は年齢とともに失われていくが、まことの花は、それを求めて精進した者には生涯失われることがない。年老いて舞う能にはまことの花がある。時分の花を失った分、まことの花は輝きを増す。」

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コメント

ポジティブに物事を考えられるって、老いていくこと何ですかね。心当たりのある自分、自然と思うべきかズルいと思うべきか…

kyさん、お久しぶりです。
ご明察に感心しました。
本著では、若く未熟なときは、ネガティブさを持つことで、より良き成長につながると書いて在りました。恐らく、成長というポジティブさとのバランスだと思います。
一方、人生の真ん中を過ぎれば、老化というネガティブさとのバランスから、精神はポジティブでなければ、生きていけないのだそうです。
なにはともかく、お互い明るくポジティブに生きていきましょう(笑)

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