【書評】スタバではグランデを買え! 価格と生活の経済学 吉本佳生/著
ちょっと古い本ですが、表紙とタイトルを見た瞬間、あまりに惹きつけられたので、とりあえず読んでみました。
大学で経済学を学んでいた時にはさっぱり頭に入らず、チンプンカンプンでしたが、こういう本だと経済とは具体的にこういう事象を読み解く手法であることがよくわかりますね。
スタバでは量はSの倍ながら値段は100円増のG(グランデ)を買うと、たくさん飲みたいお客も利益を上げたい店側も双方得するということを、実に判りやすく書いていました。
以下、印象に残った内容をそのまま引用します。
「複雑さに屈する消費者は、価格差別の餌食になる」
「インターネットの普及などのIT分野の進歩によって、情報の重要性が格段に増した」といった主張をする人もいますが、これはまちがっていると筆者は考えます。ナポレオンの敗戦という情報をいち早く入手したロスチャイルド家が巨万の富を得た例などをみれば、情報を得るためのコストが高かった昔のほうが、情報の重要性が高かったという解釈もできます。
「所得格差の問題の大部分は、本質としては資産格差の問題である。」
「少なくとも比較優位と実質金利の2つだけは覚えて使いこなせるようになると、将来きっと役に立つ」
人の仕事能力での4つのパターン
1 スター 高い能力+高い自己評価
2 自信過剰 低い能力+高い自己評価
3 器用貧乏 高い能力+低い自己評価
4 縁の下の力持ち 低い能力+低い自己評価
最も使えないのは、『自信過剰』
「少々つらいことがあっても、腐らずに、まじめに仕事をする性格」といった、きわめて基本的な人間性こそが、(能力が高いことよりも)仕事の上で高く評価されたりするのです。
【最後にひと言】
経済学と言う一見、人間の合理的な営利行動を解析しながらも、非合理的な行動様式たる「ばか正直」と言うような愚直な性格こそが、結局は仕事の上でも高く評価される。そんなことを合理的に解説してくれている本著の視点の広さは、とてもありがたく、次に進む勇気を与えてくれます。
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スタバではグランデを買え!: 価格と生活の経済学 (ちくま文庫)作者: 吉本 佳生出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2012/01/10メディア: 文庫 吉本佳生が価格を切り口に、経済学について書いた入門書。 一物一価の法則は経済学の基本的な法則の一つだが、日常生活では成立しているように見えない。 (例:ゴルフ場ではペットボトルのジュースが200円で売られていたりする) その理由はなぜなのか?一物一価の法則が間違いなのだろうか?それとも他に理由があるのだろうか? 筆者の意見は入門レベルに... [続きを読む]
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