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2012年1月 5日 (木)

【書評】ナンガ・パルバート単独行 ラインホルト・メスナー/著 横川文雄/訳

Nanga
ナンガ・パルバートとは、カラコルム山脈にある世界第9位の標高(8,125m)をもつパキスタンの高峰のことである。意味は、現地の言葉で、「裸の山」と言われ、その辺りでは抜きん出て高い山だかららしい。

本著は、そのナンガ・パルバートを完全単独行(ベースキャンプから一人で頂上まで登り、一人で下山する)で世界初登頂を成し遂げたメスナー本人による著作である。
この完全単独行は、ナンガ・パルバートのみならず8,000m峰での世界最初の成功であり、登山史においては、驚愕の金字塔的な記録である。

しかしながら、本著はそうした記録を意識することなく、単独行におけるメスナー自身のさまざまな葛藤が偉業の華やかさとは対照的なほど、細やかに描かれている。その葛藤の深さは、まさに哲学的な深淵に達している感すらある。

登攀そのものの記述は、ほんとに僅かばかりで、登攀していないときに、まるで思春期の少年のような繊細さで弱き方に心が揺れ動いているのが新鮮だ。(実際は、世界で初めて8,000m峰全14座を登頂するほどの登山界のスーパースターなのであるが。)

さまざまな思いに逡巡しつつも山登りに対する覚悟の強さなどは、わたしとは桁違いだ。これぞ、プロフェッショナルなんだろう。

それにしても、ベースキャンプから山頂までの標高差4,000m近い大岩壁を確保もなしに一人で登る、しかも最後は8,000m超のデスゾーンを無酸素で登るのである。一度の失敗が即、生命に直結する場所のだけに、技術、体力、精神力が超一流であることに加え、並外れた強運が必要である。(14座全ての登頂を成し遂げたメスナーの強運さは驚愕である。)

彼の偉業については、ウィキペディアからの抜粋は以下のとおり
 1970年のナンガ・パルバット登頂を皮切りに17年の歳月をかけて1986年には人類史上初となる8000メートル峰全14座完全登頂という登山史における大金字塔を打ち立てた。その間に1975年に、ガッシャーブルムI峰でハーベラーとのコンビで世界で初めて8000メートル峰をアルパインスタイルで登頂。1978年、ナンガ・パルバットで世界で初めて8000メートル峰をベースキャンプから単独・アルパインスタイルで登頂。さらに同年、ハーベラーとのコンビで人類初のエベレスト無酸素登頂に成功。2年後の1980年には途中、一度クレバスに転落する事故を乗り越えてエベレスト無酸素単独登頂の偉業を成し遂げた。1982年にはカンチェンジュンガ、ガッシャーブルムII峰、ブロード・ピークという8000メートル峰を1年の間に次々と登頂。チョ・オユーにおける同年の厳冬期登頂には失敗したものの、高い記録であることに変わりは無い。世界初のガッシャーブルムI&II峰縦走にも1984年に成功。1990年には92日間をかけ徒歩で世界初の南極横断に成功した。

そんな、偉大な話ではなく、山登りにおける心の葛藤が、余すところなく描かれている。山登りは奥深いです。

追記
 2010年のドイツ映画で、1970年のナンガ・パルバット登頂を映画化。日本では「ヒマラヤ 運命の山」の邦題で2011年8月公開されていた。観たいと思いつつ、そのころはヒマラヤにはそれほどの執着が無く、見過ごしてしまった・・・。あー、観とけば良かった。

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