【書評】ヒマラヤを駆け抜けた男 山田昇の青春譜 佐瀬稔/著
世界一高い山はご存知エベレスト(別名チョモランマ)で8848mだ。では世界には標高8000mを超える山はいくつあるのか?
実はたった14しかない。しかもアジアのヒマラヤ山脈とカラコルム山脈にしかない。この8000m峰を14座登頂する、それは14サミッターと呼ばれている。未だ世界にわずか21人しかおらず、日本人はまだ誰も達成していない。
最初に達成したのは、ラインハルト・メスナー(イタリア)で1986年に、翌年にイイジ・ククチカ(ポーランド)という登山家で、その次はと目されていたのが、本著の主人公、山田昇さんである。
残念ながら、1989年2月、厳寒のアラスカ・マッキンリー登山中に遭難死された。日本屈指の冒険家である植村直己さんと同じように。
つまり本著は日本の登山家としては、かなり著名な山田昇さんを描いたドキュメンタリー作品だ。
控え目、朴訥、誠実、勤勉、明朗、柔和、優しいという形容が似合う、まさにとてつもなく人の良いおじさんだ。といっても、亡くなった時はまだ39歳。既に今の私よりかなりの年下なのですが。
しかし、この人の登山は凄まじい。
若い頃の国内の名だたる岩壁をひたすら登攀。
その実力を買われて海外遠征し、8000m級の高所での無類の強さ。
エベレストもK2(世界第2位8611mながらもエベレストとは比較にならないほど難しい山)も無酸素登頂を果たす。
冬季5大陸最高峰登頂を目指しての、最難関アラスカ・マッキンリーでの遭難事故が残念です。
おそらく、8,000m級の高所では日本史上最強の登山家だと思います。
最後に、この本は、スポーツ・ドキュメンタリーですが、人間ドキュメンタリーとしても珠玉の出来映えだと思います。
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