【書評】ふがいない僕は空を見た 窪美澄/著
この本を読み終えた僕はタイトルに誘われるかのように梅雨時の曇った空を見た。
心にどす黒いもやもやとしたざらつきを感じつつ、そのうち晴れて、耐え難い暑い夏が来るだろうことを改めて心した。
現代において軽々しくなりつつある生と性。コントロールする技術を手に入れながら思うにならない妊娠と出産。その混濁と暴走。
テーマは闇のように重く深いものなれど、現代の一般家庭を舞台とするケータイ小説らしい読みやすさに、最後にわずかばかりであるものの、大いなる救いを見出せたのが嬉しかったですね。
5つの短編がつむぐ多様な現代社会の深い深い病巣と一筋の光明。
驚愕すべきは5つの短編がリレー競技のように華麗にバトンを渡して、ひとつの長編を作り出していること。
短編のように見せかけた長編だと思いながら読み進んだのであるが、巻末の初出一覧をみると短編だったので驚いた。
この闇のように深いテーマを多様な視点から描ききった傑作を理解しうる年齢とはいかほどなのだろうか?
読みやすく、青少年に早く読ませたい秀作なれど経験不足では理解不能だろうなあ・・・
いつが最適なのか?実に難しい命題だ。
追記:同い年ながら昨年出版の本作品がデビュー作らしい。しかもそれが衝撃の傑作です。これからも応援したいですね。
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山本周五郎賞を受賞後の窪美澄さんはどうなるか。
この本、私も読みました。
それぞれの作品が、(いろんな意味で)ムズムズしました。
問題の描き方が良いですね。高校生がテーマで、どこか
さわやかさも一瞬含まれる感じ。
その一瞬だけでも、ずいぶんとこんがらがった問題が軽く見える
と思いました。
さて、窪美澄さん。
こんな作品を書いてしまいましたが、今後は・・・。
http://www.birthday-energy.co.jp/ido_syukusaijitu.htm
作品が完成したのが、一生に一度の名誉の年でした。
今後は方向性の激変で、いろいろと大変そうですって。
投稿: やまやま | 2011年6月22日 (水) 22時46分