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2011年6月25日 (土)

【書評】本能寺(上・下) 池宮彰一郎/著

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言わずと知れた歴史的大事件である本能寺の変への軌跡を描いた時代小説。天才織田信長とその後継者と託されていた明智光秀の半生を通して物語は進み、そして衝撃の結末にたどり着きます。

さてわたくしのことの話になりますが、好きな作家は3人としております。
司馬遼太郎さん、塩野七生さん、そして池宮彰一郎さんです。
高名な前2名に比して、池宮彰一郎さんは見劣りするかもしれません。しかも69歳で作家デビュー(それまでは映画脚本家として活躍)のため作品数が絶対的に少ないうえ、彼の尊敬する司馬遼太郎作品と酷似(同じ時代を描いていることに加えて同一内容部分がある)により盗作作家と見られており、一般的に評価がかなり低くなっております。

作風自体、確かに司馬遼太郎に似ています。
歴史的な事実事件を独自の視点で解析し、そこから導かれるその人物の思考方法や行動様式を丹念にあぶり出し、凝縮していきます。
そうして顕わになったその人物の根源的な思考方法や行動様式を基に、謎とされる歴史的事件を論理的に解析していくのです。
その解析の斬新さと腑に落ち具合の快さの妙が、池宮彰一郎さんの作品が好きなところなのです。

ちなみに、この手法では覆すことができない歴史的な事実(当時の人物の日記や手紙、公文書の記述)については、情報不足による推測や記述者の錯誤、判断不足であることを論理的に検証してくれており、私のような余計な歴史情報を持っていると、作者の解析は違うんじゃないかという疑念を持ちがちなのであるが、本作品は、そうした情報についても隠さないで逆に完全に論破してくれる完璧な歴史小説となっているのです。

故に戦国時代小説をいくつか読んだ人には、ぜひとも本作品を読んでいただきたい作品なのです。
織田信長の事績をある程度知っている人ならば、天才信長の思考方法、奇行とされている数々の行動や事件の謎について、なるほどと十分にご納得いただけることと思います。

本能寺の変の唐突さ、驚異的な速度での大軍の移動を実現した秀吉の中国大返し(移動速度の速さは現代の自衛隊以上)について(この部分こそがこの小説の肝ですが)、本作品での、驚天動地の斬新な解析に直ぐには納得できないはずです。その読後の混乱に困惑しつつも、じわじわとやはり真実はこれしかないかと思わざるを得ない、見事なまでの解析の鋭さ、凄さ、斬新さを否応なく味わえさせてもらう逸品になっております。

ぜひともご一読していただきたい作品です。

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