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2011年6月 2日 (木)

【書評】老いへの不安 春日武彦/著

Roujin 著者は50代後半の精神科医です。
本作では、老人たちの心の葛藤や内面の鬱屈さを起因する理解し難い言動を精神科医ならではの、深い深い洞察と高い高い見識で著者なりに解き明かしてくれます。副題は「歳を取りそこねる人たち」

著者は、序章で以下のように述べております。
「自虐的な、マゾヒスティックな、げんなりするようなことに目を向けてみたい。(中略)老いの見本帳(ダークサイド版)として本書を読んでいただければ幸いである。」

さて著者がこの本で例として挙げる老人たちは次の三種類です。
「街中又は患者として出会った老人」「小説で描かれた老人」そして「老境にさしかかりつつある自分自身」
特筆すべきは「自分自身」で、この部分の記述が実に開けっぴろげ、かつ冷静で私はとても好感が持てます。

本著には示唆に富むフレーズが頻出します。多すぎなのですが列記します。

・とにかく自分の思いこみだけを一方的に繰り返し、対話が成立しない。(中略)こういった振る舞いは、まず大概は男性の老人―しかも一見したところは「かくしゃく」とした老人なのである。

・老いることは人生体験の積み重ねであるにもかかわらず、徐々に個性という多様性が失われ、雑駁なステレオタイプへと収斂していくプロセスであるかのように世間では考えられていないだろうか。

・人間の行動様式のもっとも根底にあるものは、おそらく無力感だとわたしは考えている。(中略)無力感を克服しようと努力し、あるいは自暴自棄になる者もいる。(中略)無力だからこそ不条理を受け入れきれず、無力だからこそ世の中を不条理だと実感する。

・大人なりの経験と分別とで自分をきちんとモニターしてさえいれば、さほどの間違いはない筈にもかかわらず、どうやら加齢と共に構図全体を読み間違えるような大掛かりな錯誤をしがちになってきている。(中略)歳を取ることは、老眼とか腰痛とか記憶力の低下といった話ではなく、もっと難儀なものが罠として待ち受けているということではないのか。

・歳を取るにつれて生じてくる鬱屈とは、要領よく簡単に苦労を飛び越してしまえるパワー(例えば若さ)に向かって「世の中、そんなもんじゃないだろ」と呟きたくなるような性質のものであるかもしれない。

・「老人」より「年寄り」といった呼称のほうが、経験や年輪を重んじている気配が感じられて好ましい。(中略)わたし個人の勝手なイメージでは、年寄りとは喧嘩の仲裁ができる人である。(中略)心の機微を読み取り、最後の最後になってやっと腰を上げるその状況判断の確かさと、さらには人生経験を重ねてきていることに対する万人の敬意とが、その場を丸く治めるわけである。

・老人には体力や能力が劣化した「だけ」の存在と見なされ、居場所がない。役割がない。ポジションがない。
 ならば若さに執着し、若さを装っていれば良いのか。老いることは敗北であり忌避すべきことなのか。

・昨今では老いるということに「損をした」といった感情が伴いがちではないかということである。
(中略)暴走老人たちの胸の内には若さに付随する筈の楽しいことや充実感を享受し損ねたという未練や不満が「損をした」という感覚で漂っていたのではないだろうか。諦めが悪いといえばその通りである。(中略)そこには被害者意識が生まれることになる。被害者意識は往々にして「だから自分は何をしても許される」といった傲慢さや尊大さにつながる。

谷川俊太郎の回答の一部
「人生にあるのは意味ではなく味わいだと私は思っているのですが、言葉で言うとどうも据わりが悪い。・・・」
 意味があると思うとどうしてもなんだかがんばらないといけない気がしますが、味わうものだというのならとても気楽で楽しいですね。なるほど味わいですか。

さて、私はまだ40半ばであるが、老いへの不安はますます顕在化してきている気がします。
まず、40歳になってからのランニングおやじへの突然変異は、老いへの潜在的な抵抗のような気がしています。
著者がいう「老いを受け入れられない」という前兆でしょうか・・・。
ただ、これだけ好きなことを一生懸命していれば、「損をした」という感情は湧かなくなる気がします。
そのときそのときを精一杯生きつつ、同時に漂うように流されるように味わいながら過ごしていければ、自然とうまく枯れていけるのではないか?そんな光明を見いだせた読後でした。

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