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2011年5月26日 (木)

【書評】弩(ど) 下川博/著

Do このタイトルを見て、まず漢字の意味がわかる人は少ないと思う。
プチ自慢かもしれないが、歴史好きの私とて、中国や西洋の弓の一種で、漢の高祖劉邦が暗殺されそうになった武器だったなあという知識や思い入れしかなかった。

さて、この小説、わが書棚におかねばならない逸品でした。

時は鎌倉末期から建武の親政、南北朝初期のお話。
舞台は因幡(鳥取県)の国の智土師郷(ちはじごう)という農村。

器量人である小作人の吾輔(ごすけ)がさまざまな人の助けによって商売に成功し、村を豊かにし、村長になって、悪党から村を守るという話で黒沢明監督の名画「七人の侍」を思わせる展開となっている。

まず私が気に入ったのは、文体だ。ここ最近、翻訳もの、ビジネスものが続いたせいもあるのか、である調で無骨な猛々しさのある文体が清清しくも小気味よく、故に気持ちが良いし、話の内容や展開スピードに合っているからだ。

そして小説自体も、いきいきとした農民や農村描写の中で話が進むのだが、主人公とその周りの人たちの生き様は、多くの問いを投げかけてくるのだ。宗教とは?学問とは?家族とは?商売とは?経済活動とは?戦争とは?人間とは何か?と無学な主人公の立場に何度も何度も問いかけられつつ、それぞれに一つの解をあぶりだしていく。
しかしながら、話は小難しく説教くさくなるわけでなく、主人公たちの内面の葛藤に対する理解を助けるものであり、よって展開の速い、手に汗握るサスペンスな時代小説ながらも、小説に振り切られること無く最後まで話に付いていける要因になっているのだ。

さて、作者についてですが、この方は脚本家として活躍された人でした。話の面白さから、きっと近いうちに映画かドラマ化されるのではないかと思います。

最後に、特筆すべきは、時代小説には珍しく魅力的な女性が自然発生的にあまた出てきます。その男女バランスの良さもこの本の魅力の一つです。

よって100%、お奨めしてしまう逸品です。おかげで寝不足になりました。(笑)

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