【書評】夏目家順路 朝倉かすみ著
(前略)キヨさんのものになりたかった、という言葉が胸のうちをすぎていったら、泣きたくなった。本気で殺そうとされるほど、だれかのものになりたかった。(132頁からの抜粋)
74歳のある日、脳梗塞で亡くなったブリキ職人の夏目清茂(キヨさん)。葬儀に集う人々のさまざまな人生が、清茂の死を中心にして交錯する。「どこにでもいるただひとり」の男の一生を描く長編小説。
普段アクティブに動いているような私ですが、読書や映画が好きで、そのジャンルも日常を淡々と描いたものが好きなのです。(このブログを読まれている方はご存知でしょうが)
その趣向にぴったりはまった小説です。
関わりのあるさまざまな人たちの回想シーンが折り重なるように綴られている。
冒頭の抜粋は行きつけのスナックのママさんの回想です。
通夜に集う様々な人の想念が描かれているのですが、文体を変えず、その人なりの視点や拘り、思いの拠り所を変えることで、表しているので、あたかもこちらがその人に簡単に乗り移ったかのような自然さです。
多様な人がいるのでそのうちの何人かにおいては、ささくれ立ったぞりぞりした荒れた皮膚でこちらの柔らかで敏感な触ってくるような不快な感じを受けてしまうことがあると思う。ひとえに著者の人間観察の素晴らしさに感嘆です。
思うところが多すぎて、うまく書けませんが、いろいろな思いを持った様々な人によって最終的にはこんな風に見送られたいかな。
追記:著者の朝倉さんとはどんな女性かと思って検索したら、遅咲きの作家さんでした。作家になるとは大変なんですね。自己紹介の記事はこちら
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