【書評】流跡 朝吹真理子著
この本を手にした時、なぜ借りたのか?思い出せなかった。今でも思い出せないけれど、きっと誰かがほめていたんだろう。して、この作者の朝吹真理子さんって、最近どこかで聞いたような・・・。そうだ芥川賞を取った美人の新進作家だ。受賞作は2作目となる「きことわ」で、これは処女作のようだ。こういうものを偶然予約していたとは、私も本の神様に好かれているようだ。
書き出しは以下のとおり
・・・・・・結局一頁として読みすすめられないまま、もう何日も何日も、同じ本を目が追う。どうにかすこしずつ行が流れて、頁の最終段落の最終行の最終文字列にたどりつき、これ以上は余白しかないことをみとめるからか、指が頁をめくる。・・・・・・られて、し・・・・・・つきになるこ・・・・・・光波に触れ、垂直につづくそれら一文字一文字を目は追っていながら、本のくりだすことばはまだら模様として目にうつるだけでいつまでも意味につながってゆかない。(後略)
この書き出しが、この小説の一番大事なところだと、読み終わって気が付いた。
小説とは思えない稀有な小説だ。
実のところ、途中で読むのをやめようかと思った。それでも読み続けると、最後の3頁で、最初の書き出しにつながってきた。
「本のくりだすことばはまだら模様として目にうつるだけでいつまでも意味につながってゆかない。」
まさに漂わされましたよ。あなたの言うそのままのとおりですよ。
この人は、とんでもない作家になるのかもしれないと思った。
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