【書評】BORN TO RUN走るために生まれた クリストファー・マクドゥーガル著 近藤隆文・訳
(足が痛まなくなり)私は長く走れるようになった。長く走れるため、ぐっすり眠れて気分はリラックスし、安静時の心拍数はみるみる下がっていった。おまけに性格まで変わった。不機嫌さとかんしゃくがほとんど消え、妻から喜ばれた。有酸素運動が強力な抗鬱剤であるのはわかっていたが、これほど気分を安定させ、瞑想にふけらせる力があるとは知らなかった。
4時間走っても自分のかかえる問題の答えが得られないとしたら、もうその答えが見つかることはない。
27章の一節であるが、まったくの同感だ。私に言わせると、「12kmの帰宅ランでの瞑想により、日中の大概の問題が解決して、そのままお風呂に直行し、リラックスして眠ることができる。」
この本の大部分は、今なお実在するメキシコ奥地にいる走る民族タラウマラ族(別称ララムリ)とアメリカのウルトラランナーとの対決に向けての話なのですが、印象に残るのは、走りそのものについての記述だ。
以下、25章はシューズメーカーにとっては実に頭の痛い内容てんこ盛りですが、うなずくことばかりでした。
「シューズのサポート機能をどんどん増やすことで、われわれは足を自然な状態から遠ざけてきたんだ(中略)
人は何千年もシューズなしですごしていた。シューズにいろいろな矯正機能を加えようとすれば、過剰に足の機能を補うことになると思う。
直す必要のないものまで直すことになる。裸足になって足を鍛えれば、アキレス腱や膝、足底筋膜などに問題が生じるリスクは減るだろう」
帰宅ランで裸足はリスクが高いので、裸足になったつもりで走っていることにしましょう。
ストレッチをするとかえって逆効果で、ストレッチをしたランナーは、(しないランナーより)けがをする確率が33パーセントも高いことが判明している。
かずさんもストレッチはしていません。しかも故障に悩んでいません。嬉しいような、本当にこのままストレッチしなくていいのでしょうか・・・
法則1 「最高のシューズは最悪である」
最高級シューズを履くランナーは安価なシューズのランナーに較べてけがをする確率が12.3パーセントも大きい。
統計上の数値なのでしょうが、たぶん、最高級シューズを履くのは最高レベルの人たちで、練習がハードで故障するのではないかと思う。
法則2 「足はこきつかわれるのが好き」
新品シューズより履き古されたシューズの方が安全で、シューズがすり減ってクッション材が薄くなると、ランナーは足をコントロールしやすくなる。いや、コントロールしなければならなくなる。衝撃の恐怖から逃れるために
サイズ大きめの磨り減ってへたれ気味のトレランシューズを使っています。自然と足が鍛えられているのかしら・・・
法則3 「人間は靴なしで走るようにできている」
プロネーションはすっかり悪い言葉になってしまったが、本来それは足の自然な動きにすぎない。足は内転(プロネート)するようにできている。
プロネーションの動きを見るには、シューズを脱いで家の周りを走ってみるといい。路面が堅い場合、足はシューズを履いていたときの習慣をいったん忘れ、自動的に自己防衛モードに切り換わる。あなたは無意識のうちに足の外側で着地し、小指から親指にかけてそっと転がすようにして、足をフラットにするだろう。
それがプロネーションだ。ショックを吸収するこのおだやかなひねりがあるから、土踏まずは縮まるのである。
プロネーションって聞いたことはありましたが、これだけ判りやすく説明されると納得です。私のシューズのソールは見事に外側が磨り減っていますが、プロネーションのせいだとすれば、とても良いことなんですね。
「シューズを履くのは、足にギブスをはめるようなものだ」(中略)シューズが仕事をすれば、腱は硬くなり、筋肉はしなびるというわけだ。足は戦いを生きがいとし、プレッシャーのもとで強くなる。怠惰にすごさせたら、衰弱するだけだ。徹底的に使いこめば、(土踏まずは)虹のように見事な弧を描く。
靴に限らず、怠惰は嫌いです。話はずれますが、日本人の大好きなマスクも嫌いです。あれも喉を怠惰にさせます。結果、風邪を引きやすくなります。マスクをする家族は風邪引きさんで、マスクをしない私は風邪を引きません。風邪を引かない術は別にあるのですよ。それを実行しています。ちなみに自分が風邪引いて(めったに引きませんが)咳をしているときはエチケットとしてマスクはしますがね。
ケニア人トップランナーに共通していることは、驚異的な足の弾性がある。それは彼らが17歳になるまで靴を履いて走ったことがないためだろう。
ケニア人の凄さに異論ありませんが、そのあとはちょっと主観的かつ差別的で言いすぎかな・・・
ここからはそのほかの章で印象に残った文章の抜粋です。
われわれと同じで、タラウマラ族にも秘めた欲求や不満はあるのだが、誰もが信頼しあい、仲裁にはいる警察もない社会では、欲望を満たし、恨みを晴らす場がなくてはならない。その場合、酒盛りにまさるものがあるであろうか?
誰もが酔っ払ってはめをはずし、そして多少の傷や二日酔いという罰を受け、身体のほこりを払い落として毎日を生きていくのだ。
これこれ!このことですよ!私が言いたかったのは→関連記事
アンダーライン部分の社会を再活性化するというシステムそのものでしょ!
「身体はショックを受けないと、柔軟にならない」(中略)毎日同じことをくりかえしていると、筋骨格系はすぐに適応の仕方を割り出し、自動操縦に切り替える。だが、新たな難題-小川を飛び越える、特殊部隊よろしく丸木の下側を這う、肺が張り裂けそうな全力疾走をする-に不意をつかれると、多数の神経と付随する筋肉が突然、電気が走ったように動きだす。
これは少し耳が痛い話です。ただし帰宅ランは残業で疲れて苦しい状態に適応してくれていると思うと、ウルトラで苦しくなった場合に適応していけるものと信じてくりかえして帰宅ランしていきますよ。
ウルトラランナーを前にすると、ヴィヒルは実験室で純粋な標本を扱うときのような、すがすがしい落ち着いた気分になった。いんちきなスーパープレーにだまされることはない。(中略:このあと笑顔でドーピングしてきたトップアスリート達の描写が続く)
では、誰の笑顔なら信用できるのか?簡単だ。森のなかの変人たちの笑顔なら。
ウルトラランナーにはだます理由がなかった。得るものなど何ひとつないからだ。名声も富みもメダルもない。(中略)ウルトラで優勝しても、もらえるものは最下位の完走者と同じベルトバックルのみ。
この一文はウルトラランナーの端くれとして、とても嬉しいエールのような文章です。
ただ残念ながら、すっかり人気スポーツ化した現在のウルトラでは、賞金が出て、名声も富みも得られるようになりましたがね。
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